「仕事のムダ取り」に走ると「生産性」が悪化する?

 ただ、このサイクルを回すうえで注意していただきたいことがあります。「残業ゼロ」を目標にしてしまうと、ついつい「仕事のムダ取り」に走るという誤りを犯しがちだということです。もちろん、「ムダ取り」をすることによって「減らしたい仕事」を減らすことは、とても大切なことです。しかし、「ムダ取り」にばかり意識が集中し始めると大きな弊害が生まれるのです。

 というのは、それだけでは、必ずしも仕事の生産性が上がらないからです。下手をすれば、逆に生産性を下げてしまうことすらありえるのです。

 生産性は、「投入した資源(人・モノ・金・時間)」を分母に、「得られた成果(仕事の結果)」を分子にした分数によって計算されますから、生産性を向上させるためには、「分母=投入した資源」を最小化するとともに、「分子=得られた成果」を最大化する必要があります(下図参照)。つまり、「仕事のムダ取り」によって「分母」を圧縮するのはいいのですが、その結果、「分子」まで小さくなるようであれば、生産性は悪化する可能性があるということです。

「残業ゼロ」のコツは、重要な仕事にかける時間を「増やす」こと

 では、プレイングマネジャーが「分子=仕事の成果」を最大化するために最も大切なことは何でしょうか?

 本連載で何度もお伝えしたように、もっている資源をできる限り「マネジャーとしての仕事」に投入することです。にもかかわらず、「仕事のムダ取り」にばかり意識を向けて、「マネジャーとしての仕事」を充実させなければ、生産性はむしろ悪化する結果を招いてしまうのです。

 ですから、「仕事のムダ取り」をすることによって生まれた余力を、「マネジャーとしての仕事」に投入する意識を絶対に忘れてはなりません。重要な仕事を「増やす」ために、重要ではない仕事を「減らす」。これが、「働き方改革」の大原則なのです。