大相続時代を迎え、課題解決の担い手として信託銀行にかかる期待は大きいが、信託サービスはいまだ社会に浸透していない。その現状打開を目指した新サービスについて、みずほ信託銀行の飯盛徹夫社長が「週刊ダイヤモンド」のインタビューに答えた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

遺産整理サービスが
世の中に広く浸透しなかった理由

みずほ信託銀行の飯盛徹夫社長いいもり・てつお/1984(昭和59)年慶應義塾大学経済学部を卒業後、旧富士銀行(現みずほ銀行)入行。2011年みずほ銀行執行役員、13年みずほフィナンシャルグループ常務執行役員などを歴任し、17年4月より現職 Photo by Toshiaki Usami

「感謝状をお客さんから最もいただくのは、この業務」

 みずほ信託銀行の飯盛徹夫社長がそう胸を張るのが、遺産相続手続きの代行サービスを提供する遺産整理業務だ。

 親などが亡くなった際の相続に関する手続きは、その道のプロであるはずの信託銀行の社員でも“苦行”。思い返すと、「実際にやってみると本当に大変だった」(大手信託銀行幹部)と、そろって顔をゆがめる。亡くなった人の戸籍を取り寄せて相続人を特定することから始まり、遺産の確認や財産の評価、遺産分割協議、財産の名義変更と換金など、複雑な手続きがずらりと並ぶ。

 また、亡くなった人は地方にいるというケースが多く、手続きを行う人が都心にいると、わざわざ地方に出向かざるを得ない。その上、故人の口座残高証明書の発行には銀行窓口で手続きをする必要があり、多くの会社勤めの人にとって最悪なことに、ほとんどの銀行は週末にやっていない。

 こうした数々のハードルを信託銀行が代わりにくぐり抜けてくれるというのが、遺産整理サービスというわけだ。しかし、利用した顧客からは感謝の声が届く一方で、世の中に広く浸透するには至っていない。