被災地でようやく動きだしたがれき処理。本格化するまで1年近くかかったのは、思わぬ壁が立ちはだかっていたからだ。
解体・撤去したがれきは、まず仮置き場に集めた後、重機や人の手を使って不純物を取り除いた上で、可燃物と不燃物に分別。最後にリサイクルや焼却処分しやすいよう、小さく破砕する。
こうした一連の処理に携わるのが大手ゼネコンや地元の建設業者だ。企業共同体(JV)を組み、県と市から業務委託を受ける。
仮置き場は校庭が多く、子供たちの遊ぶ場所がない。ところが岩手県と分別・破砕業者の契約が締結したのは、震災発生から9ヵ月が経過した昨年12月中旬。ここまで時間がかかったのには全国の都道府県で施行された暴力団排除条例が関係している。
暴力団排除条例とは、事業者から暴力団へ金品を渡すなど関係を持つことを禁止するもの。違反すれば罰金刑の他、事実を公表される。事業者は取引する相手が暴力団でないことを確認するよう努めなければならない。
県ではこれを受け、JVの構成会社一つ一つを綿密に調査。入札に権限を持つ人物、例えばある大手ゼネコンに対しては、全国の各支店長クラスまで住民票の提出を要請した。
提出書類を基に県は、本籍地を所管する市町村に犯歴を照会。県の災害廃棄物対策課のキャビネットには、こうした資料を綴じたファイルが溢れた。
一部で、「不適切な業者が入っている」とのうわさもあったため、慎重に慎重を期したという。
「がれきで覆われた街はハエが飛び交い不衛生。一刻も早く処理を進めたいのに、条例への対応は予想以上に時間がかかってしまった」(岩手県)
暴力団員は全国で8万人前後いるとされる。がれき処理だけでなく復興工事が本格化するにつれ、そこに付け込もうとする暴力団の動きも活発になる可能性は高い。今後、復興を阻む思わぬ火種になるかもしれない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)