使われていないドアからオフィスの机を作ったという話で知られるアマゾン・ドット・コムだが、もはや安上がりに済ませる策は限界に来ているのかもしれない。世界第2位の時価総額を誇るアマゾンは、他のハイテク大手と違い、高い技術をそれほど必要とされない大量の労働者に頼ってきた。そうした労働者は同社の広大な物流センター網を運営し、顧客に注文の品を届けているほか、昨年のホールフーズ・マーケット買収を受けて今では小売店も運営している。アマゾンは現在、世界に約57万5700人の正社員を擁する。これは、マイクロソフト、アップル、オラクルといった大手ハイテク各社の4倍を上回る人数だ。だがアマゾンの業務の性質上、その賃金水準はハイテク企業の底辺に位置する。ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)を除くと、昨年の従業員の賃金の中央値は2万8466ドルと、グーグルの親会社アルファベットの14%程度だった。それもあって、アマゾンは多くの労働者が直面する環境を巡る数々の手厳しい報告の対象になってきた。また、2016年大統領選の民主党予備選で旋風を巻き起こしたバーニー・サンダース上院議員やドナルド・トランプ大統領など、かなり広い範囲からたびたび批判を浴びてきた。