

ワークデイの人事ソフトのもう一つの特徴は、アナリティクス(分析)だ。
同社は以前より、人事データから企業の運営におけるインサイトを得るための試みを続けてきたが、ここへ来て「プリズム・アナリティクス(Workday Prism Analytics)」というデータハブを発表した。これは同社が2016年に買収したプラットフォーラ(Platfora)のテクノロジーを統合した結果だ。
プリズムでは、ユーザー企業のデータやオープンなデータを集めてAI機能を統合し、ここから人事や財務に関する多様なインサイト(気づき)が得られるようにしている。
例えば、人事面ならば「ピープル・アナリティックス(Workday People Analytics)」というアプリケーションを利用し、社員の多様性を他社と比較したり、人材の雇用が遅れていることやその理由を知ったり、離職率の高い支社はどこか、またそこのマネージャーを特定したりできる。「ピープル・アナリティクス」の画面はビジュアルでわかりやすく構成されており、ドラッグ&ドロップ式でデータを組み合わせて新たなインサイトを探ることも可能だ。
ワークデイでは、自社の強みを「Power of One」とする。人事関連のデータを1カ所に集め、一つのバージョンのソフトウェア、一つのセキュリティー・システムをクラウド経由でSaaS(Software as a Service )として提供する。
これまでならば人間がアナログに判断をしなければならないと考えられてきた人事が、今や大きく変わろうとしているのがワークデイの開発から感じられる。例えば日産自動車では、人材をグローバルに活用するために、ワークデイHCMやプリズムなどの導入を全世界的に進めているという。同社グローバル・デジタルHRジェネラル・マネージャーのラジュ・ヴィジェイ氏によると、自社の強みを発揮するために独自のデータセットの組み合わせに工夫も施している。
ガートナーでリサーチ&アドバイザリ部門エンタープライズ・アプリケーション担当バイス・プレジデントを務める本好宏次(もとよしこうじ)氏は、今や人事は「KKD(勘と経験と度胸)の時代から科学的手法を用いる時代に移行している」と語る。人事ソフトの業界では、SAPが買収したサクセスファクターズ、オラクル、ワークデイを「ビッグ3」として、ほかにも何社ものプレーヤーが存在するが、すでにアメリカで見られる大きな潮流は、人事部門が新しい動きをIT部門に教育するようになっていることだという。
人事情報も「データ」の一種であることは間違いない。データを使いこなせるかどうかが企業人事、ひいては企業戦略を左右する時代が到来した。