安倍政権が進めている「外国人労働者の受け入れ拡大」は、どう見ても「移民政策」である。人手不足にあえぐ経営者たちは大喜びするだろうが、移民が増えれば若者の賃金は上がらないまま。「移民政策」という本当のことを国民に伝えず、「外国人労働者」とマイルドな表現をして移民政策が進んで行くのを許していいのだろうか?(ノンフィクションライター 窪田順生)
出入国管理法改正案は
「移民政策」である
安倍政権がいよいよ「移民政策」を本格的に進め始めた。昨日から始まった臨時国会で、外国人労働者の受け入れ拡大を目指し、新たな在留資格を盛り込んだ出入国管理法改正案の提出を目指している。
政府の骨子案では、この新たな在留資格では、介護、農業、建設、外食など14の分野において、「相当程度の知識または経験」を有する外国人労働者に、在留が最長5年の「特定技能1号」を付与。さらに、試験を受けたり、「熟練した技能」があると判断されたりすれば、「特定技能2号」へとバージョンアップする。こちらは在留期限無制限で、家族の帯同も認めている。
いろいろと難解なもの言いをしているが、世界ではこれを「移民政策」と呼ぶのが一般的だ。「移民」の法的定義はないが、国連も「移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々を国際移民とみなす」(国際連合広報センターHP)ことが一般的だと見解を示しているからだ。
つまり、どういう言葉で取り繕おうとも、これは「移民政策」に他ならないのだ。
という話を聞くと、「いいことじゃんか、これからは日本ももっとオープンで多様性がないと」とテンションの上がる方もいる一方で、「いや、別に差別とかしているわけじゃなくて、ホラ、外国人が日本で暮らすのは色々大変だし」と遠回しに“来ないでくれオーラ”が出てしまう方も多いことだろう。
観光客として訪れて、「日本サイコー」と褒めちぎってお金を落としてくれるならいいけど、隣人としてずっと暮らすようになると「それはちょっとねえ」と顔をしかめる方は少なくないのである。
愛国心の強い方の場合は、もっとストレートに「来るな」と言うだろう。欧州や米国のように、労働力を「移民」に依存したことで、治安悪化や民族・宗教間の衝突が起きているケースを引き合いに出し、トランプばりに「移民」の中には犯罪者が紛れ込んでいると主張される方も、ネット上では珍しくない。
ただ、筆者がこの「移民政策」を危ういと感じるのは、そのようなフィーリング的なものではなく、経済的な側面からである。