館内で迷ったり失禁も…
高齢者増加で悩ましいことも

 図書館では、本のような印刷物を読むことが困難な人々でも利用できる本を、一般的に「バリアフリー図書」と呼んでいる。例えば、文字が大きい「大活字本」や、朗読を収録した「オーディオブック」などが、バリアフリー図書にあたる。

 このバリアフリー図書を集めたコーナーは、ほとんどの公共図書館に設置されている。視覚障害、肢体不自由など身体的な障害がある人、ディスレクシア(読字障害)やADHD(注意欠陥・多動性障害)といった障害がある人が対象となるが、実はそこに高齢者も含まれている。

「大活字本もオーディオブックも高齢者への貸し出しが増えていますよ」――。東京郊外にある公共図書館の司書は、老眼で目が疲れるという高齢者にバリフリー図書は人気があると教えてくれた。ここまでは、ナルホドとうなずけるのだが、「たまに図書館内で迷子になる方が……」、「大量の本を持ち出そうとする……」そして「椅子の上で失禁……」と、今までは例外的だったアクシデントが日常化している現場の様子は切実だと語る。

 意外かもしれないが、公共図書館には高齢者という利用者区分の視点がない。足が悪い、目が悪い、耳が遠いといった不具合を抱える高齢者のニーズは、障害者ニーズと重なっているという考え方なのだ。

 国立国会図書館は2017年、「超高齢社会と図書館~生きがいづくりから認知症支援まで~」という調査を行った。

 高齢者の図書館利用について行われたその調査では、自動ドアや階段のスロープ、エレベーターなど施設の整備といったハード面は充実しているが、元気な高齢者へのサービスや、認知症への応対といったソフト面に対する大きな課題が残されているとまとめられている。これまで公共図書館では、高齢者への目配りがほとんどなされてこなかった結果といえるだろう。

 また、この調査の研究主幹である呑海沙織教授(筑波大学図書館情報メディア系)は「高齢者へのインタビューでは、自身のこれまで培ってきたものが披露できる、クリエーティブに創造する場として図書館を捉え、主体的な社会参加への意欲を持つ高齢者像が浮かび上がった。主体的な社会参加は生きがいにもつながる。超高齢社会においては、豊富な知識や経験を持った高齢者は、図書館サービスの受け手としてだけではなく担い手となりうる。これからはマインドセットの転換が図書館側に求められるのではないか」と、ネガティブなイメージで高齢者の図書館利用を捉えるのではなく、社会へもたらすメリットに注力することが必要と調査を振り返る。