「最近もの忘れが多いなぁ」
 「手が少し震えるような気がする」

 あなたはそう感じながらも、「気のせいだろう」と毎日をやり過ごしていないだろうか。実はこの症状、近年話題にもなっているアルツハイマー病をはじめとした『若年認知症』など、脳に異常を引き起こすサインであることも否定できない。特に、若い頃浴びるように飲酒をしていたならば要注意だ。たとえ今は「1日ビール2缶」であっても、だ。

脳の萎縮は過去の飲酒習慣から
今は「1日ビール2缶」でも要注意

会社の健康診断をきっかけに脳ドックを受診
年齢より進んだ脳の萎縮がみつかったAさん
(40歳メーカー管理職)

 会社指定の人間ドックのクリニックに、1年に1回の健康診断にやってきた大手メーカー管理職のAさん(40歳)。検査前の問診表に、飲酒の習慣を「1日ビール2缶」と書き込んだ。ここ数年、健康診断ではアルコール性の肝臓の状態を示すγ-GTPの数値も安定していたので何も心配していなかった。

 一通り人間ドックを受診後、脳の萎縮もわかるということで、認知症も心配になり、生まれてはじめての「脳ドック」を受診することにした。

 MRIは横たわっているだけで、15分で終了。痛くもかゆくもないので思ったよりも簡単だ。工事現場にいるような音がするだけで、全く苦痛はない。

 人間ドックが終わった後、医師から説明を受けた。血液検査や血圧、メタボ系はすべて基準値。むしろ20代の頃より改善したくらいだ。以前注意を受けたことのある中性脂肪もコレステロールも血糖値も安定していた。

 しかし、最後に医師から衝撃の事実が告げられた。

 「Aさん、年齢の割に“脳の萎縮”が気になります。もしかして今までにアルコールをたくさん飲まれていませんでしたか?」

 「はい。若い時は毎日、仕事が終わったあとに社内の先輩や上司と飲みに行くのが当たり前でした。実はうちの会社は、先輩からつがれた酒は飲み干すという伝統があり、新入社員の時代から30代後半まで、20年近く浴びるほど飲んでいました。休日もついクセで昼間から飲んでしまい休肝日なんてありませんでした。多い時で日本酒なら1升。ウイスキーならボトル1本と今では信じられない量を飲んでいた気がします。泥酔することも多く、量が把握できないくらいでした。

 ですが、数年前の健康診断で肝臓の数値を指摘されたのと、飲んだ翌日は疲れが残り仕事の効率が下がったことを実感したのでお酒の量を減らしました。

 今は家では飲まず、同僚とも最初の乾杯でビールを飲む程度にしたところ、体調は戻りました。にもかかわらず、当時の酒が脳にでるなんて…」