ジャマル・カショギ氏の殺害により、サウジアラビア社会の近代化に尽力しているというムハンマド・ビン・サルマン皇太子の主張には当然のように疑念が生じた。サウジに批判的な人々は今回の殺害事件について、ロバート・ケーガン氏が「近代化をもたらす独裁者の神話」と呼ぶ概念を否定するものだと主張している。この概念は、抑圧的な権力者が時として社会経済的な発展への道筋を示し、それが結果的に民主化につながることもあるというものだ。興味深いことに、第2次世界大戦後に最も目覚ましい発展を遂げた韓国、台湾、シンガポールは、この概念の誤りを証明する例から外れている。韓国は1987年までは、選挙で選ばれた独裁的な大統領の政権と、全くの独裁体制を交互に繰り返していた。台湾は1990年近くまで戒厳令下にあった。こうした体制の下で、韓国と台湾は、世界で最も貧しい国・地域から最も先進的な国・地域へと変貌を遂げ、民主化への基盤を築いた。シンガポールでは、リー・クアンユー氏が作り上げた半独裁システムの中、同氏の下で同様の華々しい近代化が進められた。
近代化もたらす独裁者は神話にあらず
サウジのムハンマド皇太子は同国の改革を行えるのか?
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