金融に関する基礎知識を習得する「金融教育」。日本でも耳にする機会が多くなってきたように思う。関連書籍が出たり、大企業が金融教育の普及に力を入れ始めるなど、少しずつ認知が広まってきている印象だ。しかし、依然として言葉の定義が勘違いされ、金融教育と称しながら、ただの怪しい情報商材を売りつけるだけなど、悪用されているケースも散見される。金融教育は必ずしもお金を増やすことだけをいうのではなく、お金を守ることや、お金のあり方を深く知ることなども含まれる。いま、お金に対する学び直しが必要になっている。(株式会社マネネ 代表取締役社長CEO 森永康平)
特殊詐欺の2017年被害総額が400億円にせまる日本
2018年10月、あるニュースを見て驚いた。とある事業者が「スマホをタップするだけで月収200万円」などの虚偽の広告を使って多額の費用を払わせたということで、消費者庁が消費者安全法に基づき注意喚起をしたという。8月にも「ビットコインの供給側に回り、毎月最低でも30万円分のビットコインを受け取り続けることができる」などとうたう事業者の存在について、同じく消費喚起をしている。
こんなあり得ないことを何故信じてしまうのか、というのが正直な感想だが、こうした事例も金融教育の不在が生み出した結果なのであろう。お金やビジネスの仕組みが理解できる人間からすれば、あり得ない話なのだが、そうでない人間からすると美味しい話に見えるようだ。
面識のない不特定の者に対し、電話などを用いて、預貯金口座への振込みその他の方法により、現金等をだまし取る詐欺を「特殊詐欺」というが、警察庁が発表した「平成30年上半期における特殊詐欺認知・検挙状況等について」によれば、認知件数は平成22年以降、平成29年まで7年連続で増加している。暫定値ではあるが、平成30年の上半期は前年同期比で見て-7.6%と減少はしているものの、下半期次第では8年連続で認知件数が増加するという不名誉な記録を残しかねない。