「地球の視点からドンキを見守りたい…」
六白としての安田さんの美学の裏側

 リーダーのパワーが強いと“カリスマ”と呼ばれたり“ワンマン”と言われたりして、結果、後継者問題に悩む企業が出てくるものですが、その点、安田さんの身の引き方は実に清々しいものでした。

 肩書は名誉職だけで経営には一切タッチせずという姿勢です。

 これは、ドン・キホーテ型人材育成である「権限移譲」で育ってきた現場を知り尽くした幹部たちの存在があるからでしょう。

 そして自らの引退という第二の「権限移譲」で、ドン・キホーテに関わる人間の志をさらに高みへと押し上げていく。

 思い切った身の引き方は、そんな安田さん流の“愛情表現”だったのかもしれません。

《今後は地球の視点からドン・キホーテを見守り、全力でバックアップを行いたい》
 安田隆夫『安売り王一代――私の「ドン・キホーテ」人生』(文藝春秋)

 実に天の六白らしい言葉ですね。

 ドン・キホーテのパワーは、他社にはまねできない“安田イズム”がDNAとして社内で伝承されていく仕組みがしっかりと根付いたからこそのパワーなのです。

 今後の小売業界に注目ですよ。

中野 博(Hiroshi Nakano)
信和義塾大學校創設者兼塾長、経営コンサルタント
早稲田大学商学部卒業。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院ブランディング実践講座エグゼグティブコースを修める。ハーバードビジネススクールでは経営学を学ぶ(いずれも短期集中型の経営者クラス)。1992年、地球サミットに国連認定ジャーナリストとして参加したことを契機に環境ジャーナリストとして活動。1997年の地球温暖化防止京都会議を機に、株式会社エコライフ研究所設立。環境ジャーナリストとしての取材・分析力と経営コンサルタントとしての提案力をベースに、800社以上を環境ビジネスに参入させ成果を挙げる。その傍ら、住宅、環境を軸にした本を多数出版(本書が30冊目)。講演依頼も多く、国内外で2000回以上の実績。2005年、教育研修会社の株式会社ゴクーを設立。1万人のサンプリングを体系化した『9code(ナインコード)』をもとに、信和義塾大學校で指導にあたるほか、企業や各種組織で『9code』を利用したコンサルティングや人材活用研修も多い。現在、信和義塾大學校は、世界6ヵ国20都市以上にあり、塾生は700名超。