バブル崩壊でも無傷だった
ドン・キホーテの知られざる秘密
六白の性質でもある“先見性”は、安田さんの場合、「時の流れを読む」あるいは「場を読む」「市場を読む」といった経営の岐路に立った時に発揮されました。
たとえば、バブルの時代。企業の中には本業を忘れ、財テクや土地取引で財を成すところも少なからずあった時代ですが、安田さんはバブルには一切関心を示さなかった。
おかげでバブルが弾けたあともドン・キホーテは全く無傷でした。
むしろ、バブルが弾けたおかげで成長のチャンスをつかんだのです。
バブル損害を被った企業から好立地の店舗を安く手に入れることができるようになり、これがその後のドン・キホーテ躍進のきっかけになったのです。
そして、その後もバブルが弾けては買いというスタイルを続け、現在では“企業”もこの手法で買い、再生してグループ拡大へとつなげていくという新しい事業のパターンを作り出しました。
これも逆張りの発想ですが、不況こそ拡大のチャンスとし、実際に攻めの一手を打っていく。
言葉だけなら野心的で魅力たっぷりですが、現実にはなかなかできません。
こうした“一呼吸置く”経営の手法が安田さん独特の手法で、若いころ麻雀で養った勝負勘が、経営者としての判断を求められるときに役立ったそうです。
《ツキのないときは無理せず「見(けん)」を決め込む。その姿勢が身についたおかげで、大やけどをせずに済んだこともたくさんあった。》
安田隆夫『安売り王一代――私の「ドン・キホーテ」人生』(文藝春秋)