フェイスブックは不自由な「集団農場」になっている

 ニューパワーは社会に浸透し、多くの分野で勢いを増している。治験のクラウドソーシングや、愛情や思いやりから生まれた迅速な慈善活動など、正しく用いられた場合には、すばらしい効果を発揮している。

 しかし、ISISや人種差別主義者などに悪用された場合には、同じスキルが途轍もない破壊力を発揮してしまう。人を結びつけるためのツールが、人を引き離すこともできるのだ。

 ニューパワーを利用した巨大なプラットフォームを構築し、取り仕切っている者たちは、時代の新しいエリートになった。そうしたリーダーたちは「シェア」「オープン」「コネクテッド」など、群衆の言葉を多用する。だが、行動が伴っているかどうかは別の話だ。

 たとえばフェイスブックは、ニューパワーの代表的プラットフォームとしてよく知られている。人びとがたくさんの「いいね!」やスマイルマークを押すことで、〝共有のパワー〞が生まれると同社は言っているが、20億人のユーザーは、フェイスブックが生み出す巨額の経済的利益の恩恵をまったく受けておらず、運営方法にすら口を出せない。ユーザーの気分や自尊心、さらには選挙結果にまで影響を及ぼすことがわかっているアルゴリズムについても、まったく明らかにされていない。

 僕たちは、初期のインターネット先駆者たちが思い描いた自由な楽園とはほど遠い、集団農場のような世界で暮らしている感じがしてならない。少数の巨大なプラットフォームが世界中にフェンスを張りめぐらし、数十億人の日常の活動という〝収穫〞を独占しているのだ。

 民主主義も危機にさらされている。多くの人びとは、ソーシャルメディアの隆盛が独裁者たちを打倒するだろうと期待していた。ところが、民主化に役立つはずのツールを駆使して、世界各地で新しいタイプの「強者」が誕生している。

 たとえばドナルド・トランプは、ソーシャルメディアを通じて彼に触発された膨大な数の支持者を手に入れた。彼は支持者らの体験談やコメントを積極的に採用し、敵を攻撃した。それはきわめて共生的な関係だった。

 トランプは熱烈な支持者たちの投稿をリツイートした。集会で抗議者に暴力を振るった者たちには、自分が弁護士費用を負担すると申し出た。トランプは自らの主張を押し付けるのでなく、自分を盛り立てる人びとの言動を活性化させることで、熱狂的な支持を獲得したのだ。独裁的な目的を達成するために、ニューパワーのテクニックを習得したトランプは、まさに「プラットフォームの強者」と言えるだろう。

新しい時代に「強者」になるメカニズムがわかる

 本書ではこれから、集団農場やプラットフォームの強者が生まれる力学について説明していく。さらに重要なポイントとして、対抗策の実例も紹介する。もっとも力を持たない人たちを含む大勢の人にパワーを分配しようとする、新しいモデルの取り組みだ。

 民主主義を脅かすのでなく、立て直すために奮闘している先駆者たちの事例も紹介する。彼らは行政において、市民たちが敵対的な部外者から共同運営者へと転身を遂げ、活躍するまでに導いている。

 さらに、社会で重要な役割を担う組織を取り上げ、オールドパワー型からニューパワー型へと変貌するまでの険しい道のりを追う。

 もっとオープンな、民主的かつ多元的な社会を実現しようと奮闘している人たちが、本書によって必要なツールを手に入れ、成果をあげることを希望してやまない。

 本書は、ニューパワー・モデルを創造し、より多くの人に参加の機会をもたらそうとしてきた僕たち自身の経験に基づいている。ヘンリーは国際的な慈善活動「ギビング・チューズデー」を立ち上げ、数億ドルの寄付金を集めた。ジェレミーは20代で母国のオーストラリアにおいて、テクノロジーを活用した政治運動を立ち上げ、国内最大の団体へと発展させた。以来、ニューヨークに拠点を置く「パーパス」を通じ、世界各地で数多くの社会運動の立ち上げに協力している。

 ニューパワーに潜む可能性と危険性を間近で見てきた僕たちは、これまで学んだことをみなさんと共有したいと思っている。僕たちは協力し、各地の企業やコミュニティと一緒になって取り組むことで、いま世の中でどんな変化が起こっているのかを突き止め、その理由を探り、対策を考えてきた。

 詳しくは、これから紹介することにしよう。

(本原稿は『NEW POWER これからの世界の「新しい力」を手に入れろ』からの抜粋です)