本書のミッション――新しいパワーの使い方を伝授する
将来的には、人びとの動員をめぐって熾烈な争いが起こるだろう。一般人であれ、リーダーであれ、組織であれ、成功するのはよくも悪くも、人びとの参加意欲を巧みに操れる者たちだ。
僕たちがそうした考え方を『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌で初めて発表して以来、外交官、図書館司書、医療従事者など、多岐にわたる分野の人びとが、新しい考え方に基づいて自分たちの業界を見つめ直しており、僕たちにも刺激になっている。このあとの各章では、そのような新しい原動力をよく理解している組織や個人のストーリーを紹介する。
たとえば、レゴ社は顧客のもとに立ち返ることで、どのようにしてブランドを窮地から救ったか。会員制カンファレンスだったTEDが、どのようにして著名人による講演会を開催・配信する世界最大規模の団体となったのか。ローマ教皇フランシスコが大勢の信徒に力を与えることによって、どのようにカトリック教会の体質改善を図っているかなど、さまざまな取り組みを見ていく。
さらに、あまり知られていない例としては、顧客によるデザインを可能にした自動車メーカーの取り組みや、読者が出資や運営を行っているメディア会社の成功例などを紹介する。
ポスト真実の時代に自分の知識を多くの人と共有したいと切望している歴史家であれ、親として地元の教育委員会の運営に熱心に携わっている人であれ、新商品の好調な滑り出しを望んでいるクリエイターであれ、いま、どんな業種や立場の人も知っておくべき「新たな能力」が存在する。
その能力は、フェイスブックやスナップチャットで自分を演出するスキルなどと勘違いされがちだが、ニューパワーとは、たんに新しいツールやテクノロジーを指すのではない。
国務省がISISに対するインターネット戦略を誤ったように、多くの人びとは参加のための新しいツールを、きわめてオールドパワー的な方法で用いている。
本書はパワーの行使について、従来とは異なるアプローチや考え方を紹介する。流行っては廃れるツールやプラットフォームとは違って、長く活用できるはずだ。
・どうすれば大勢の人が飛びつき、盛り上げ、拡散してくれるアイデアを生み出せるのか?
・集団との結びつきがますますゆるく一時的になっていく時代に、どうすれば大勢の人が長く所属したがる場をつくれるのか?
・新旧のパワーをどのように使い分け、どんなときに両方を組み合わせるべきか?
・オールドパワーのほうがよい結果をもたらすのは、どんなケースか?
本書はこのような問いに答えながら、世界中のもっとも刺激的なニューパワーの成功例(および重要な教訓とすべき例)の数々を紹介していく。