超SNS時代に「今の一流」が落ちぶれる理由(下)

20世紀は、大手企業や政府などが権力を持つ「オールドパワー」の時代だったが、テクノロジーの発展の結果、いまや大組織がパワーを溜めこむことは不可能となった。21世紀は、個人でも際限なく大きな権力や影響力を持てる「ニューパワー」の時代。あなたは「ニューパワー」の側の人間だろうか、それとも「オールドパワー」だろうか――?
世界に起こっているそうしたパワーの変化とその影響を鮮やかに読み解き、米ニューヨーク・タイムズ紙、英フィナンシャル・タイムズ紙など各国メディアで絶賛されている書籍が『NEW POWER これからの世界の『新しい力』を手に入れろ』だ。
著者は、ハーバード大、マッキンゼー、オックスフォード大などを経て、現在はニューヨークから世界中に21世紀型ムーブメントを展開しているジェレミー・ハイマンズと、約100か国を巻き込み、1億ドル以上の資金収集に成功したムーブメントの仕掛け人であり、スタンフォード大でも活躍するヘンリー・ティムズ。
本書ではこれからの時代におけるパワーのつかみ方、権力や影響力の生み方、使い方について、まったく新しい考え方を紹介している。その刊行を記念して、前回「超SNS時代に『今の一流』が落ちぶれる理由(上)」に続き、その一部を特別公開したい。

テクノロジーの変化が「新たな考え方」を生んだ

 いつの時代も、人びとは世の中に参加したいと思っていた。どの時代にも運動が起こり、人びとは団結して立ち上がった。共同体は協力体制を築き、文化を創造し、交易を行った。そこにはつねに「上位下達か、下位上達か」、「縦の階層か、横のつながりか」といった意見の対立があった。

 人びとが社会に参加したり大勢の人を動かしたりする方法は、つい最近まではかなり限られていた。だが現在では、どこにいてもつながれるおかげで、僕たちは地理的な境界線も関係なく、かつてない速度と広範さで組織を結成できるようになった。

 本書でこれから見ていくとおり、そのような密接につながった状態から、僕たちの時代を形づくる新たなモデルや考え方が誕生した。それこそがニューパワーならではの特徴だ。

 ソーシャルニュースサイト「レディット」の人気のスレッドに、いまとは暮らしぶりがかけ離れていた、1990年代の青春の思い出を募ったものがある。当時はまだ生まれていなかった人たちにとっては、まるで別世界の話だろう。

 たとえば、卒業アルバムに載る写真ができるのをドキドキしながら待つ――なにしろ「学校で自分や友人たちの写真を撮ってもらう機会などこのときしかない」のだ。ポートレートは1枚しか撮らないし、フィルムが現像されるまで出来映えはわからない。

 地元のラジオ局に電話して、好きな曲をリクエストするときの緊張感。曲がかかったらすぐに録音できるようカセットレコーダーの録音ボタンに指を載せ、いまかいまかと待ち構えていた。

 帰宅途中にレンタルショップに寄って、映画のビデオを借りるときのわくわく感。

 図書館へ行って、目当ての本が貸し出し中、あるいは「書架にあるはずですが、見つかりません」と言われたときのもどかしさ。

「大人になったら、ポケットに電卓を入れて持ち歩くわけにいかないんだから」と、電卓の使用を禁止され、計算をさせられたときのうんざりした気持ち。

 ところがいま、我々のポケットに入っているのは、電卓どころの代物ではない。現在の世界では、我々はみな(文字通り)新しい参加の手段を手にしたと言える。これによって、さまざまなことが可能になっただけでなく、人びとの世の中への関わり方も変化してきている。