アルバムのような静的な商品が音楽ストリームのような流動的なサービスに変わると、何が起こるだろう。ありとあらゆる興味深いことが起こる。
今日、何千何万というミュージシャンがパトレオンのようなプラットフォームから信頼できる安定的な収益を得ている。そこに集うミュージシャンたちは、エリック・リースが説くリーン・スタートアップのための方法論のように、実験、検証による学習、その反復といった手法によって製品開発サイクルを短縮しているのである。そしてリスナーの反応を曲づくりに活かすという好循環を作り出している。
MVP段階の楽曲をそこに並べておけば、サブスクライバーがお金を払ってくれ、ミュージシャンは曲を完成させる前からファンを購買へと導くファネル〔見込客が最終的な購入へと至る過程を漏斗(ファネル)になぞらえた図式的理解〕を用意することができる(もちろんいつかは完成する)。楽曲に手を入れながら最終的な販売に至るまでのサイクルを最適化できることのメリットは大きい。
(本原稿は書籍『サブスクリプション』からの抜粋です)
〈バックナンバー〉
第1回 フォーチュン500に入り続けている企業の共通点とは?
第2回 急成長企業のビジネスモデルはここが違う
第3回 加速する自動車業界のサブスクリプション
第4回 「空のウーバー」のすごいビジネスモデル
第5回 ソフトウェアの常識を塗り替えたGmailの開発哲学
第6回 市場調査ゼロで海外進出を成功させたスナック菓子の定期購入サービス
第7回 ネットフリックスが「パイロット版」を作らない理由
『サブスクリプション』著者、ティエン・ツォ氏のインタビュー記事はこちら
「サブスクリプション」拡大でギターの名門Fenderが大成功した理由――ティエン・ツォ ズオラ創業者兼CEOに聞く(上)
無数にある「サブスク」の収益モデル、高級卓球セットも意外な人気――ティエン・ツォ ズオラ創業者兼CEOに聞く(下)
Zuora創業者兼CEO
セールスフォース・ドットコムの創業期に入社し、CMO(最高マーケティング責任者)やCSO(最高戦略責任者)を歴任。同社での経験から「サブスクリプション・エコノミー」の到来をいち早く予見し、2007年にZuoraを創業しCEOに就任。Zuoraは、従来のプロダクト販売モデルからサブスクリプション・モデルへのビジネスモデル変革と収益向上を支援するSaaSプロバイダで、世界に1000社以上の顧客を持つ。2018年4月にニューヨーク証券取引所に上場。