消費者の関心が「所有」から「利用」へと移行しつつあるなか、急成長をとげているのがサブスクリプション企業だ。音楽・動画配信などで日本でも知られるようになったこのモデルが、なぜ伸びているのか。最新刊『サブスクリプション』(ティエン・ツォ著)の本文から一部抜粋してお送りする。

「空のウーバー」のすごいビジネスモデル

飛行機利用の不便・不満を断ち切る

 誰でも空の旅がどんなものかを知っている。まったく酷いものだ。私のように出張で頻繁に飛行機を利用する人間でも、無事座席に座るまではひと苦労だ。そんな悩みを持つ人はサーフエア(Surf Air)を利用するとよいかもしれない。

 同社のジェフ・ポッター元社長兼CEOは、以前は航空会社とバケーションクラブを管理していたことがあり、両方のコンセプトを組み合わせようと考えた。その結果、サーフエアは「航空業界のネットフリックス」とか「空のウーバー」などと呼ばれている。メンバーになると、定額の月額料金で無制限で飛行機に乗れる。いまのところ米国西部と欧州で急速に成長している。

 これは、顧客の要望とニーズから発想して素晴らしい結果を収めた典型的な成功例といえる。

 同社は顧客が空の旅に感じている不便や不満をバッサリ断ち切り、それによってロイヤリティのある加入者ベースの拡大を実現した。会員は電話で、いまから乗れる次の便を確認して予約することができる。優先搭乗できるので、すいすい進んでいける。西海岸を始終飛び回っているズオラの社員にとっては、すべてが一変するような体験だ。

 航空業界は長年、空の旅を自分で自由に管理したいと望む顧客の存在にかきまわされてきた。空の旅は、直前にチケットを買おうとすると高い料金を請求される。旅行プランを自分の都合に合わせて組み立てようとすると、まるで罰金を取られたような気になる。

 空港で費やすことになる時間も問題だ。搭乗や乗り継ぎの非効率性は、空港の売店にはプラスかもしれないが、一刻も早く目的地に着きたい旅行者には苦痛でしかない。