2018年12月8日号の週刊ダイヤモンド第一特集は「日本人はもうノーベル賞を獲れない」です。20世紀に入ってから、日本は米国に次ぐ数のノーベル賞受賞者を排出しています。しかし、そんな科学記述立国日本の足元は、驚くほど揺らいでいます。一方で、「まだまだやれることはある」と研究現場で奮闘するのが、2014年ノーベル物理学賞受賞の天野浩・名古屋大学教授と2002年ノーベル化学賞受賞の田中耕一・島津製作所シニアフェロー。産学連携で再びイノベーションを起こそうとする二人の取り組みを追いました。

建設された研究所
名古屋大学に建設した半導体の実験施設。2階建て1000平方メートルのクリーンルームを備え、企業の専任技 術者が常駐する Photo by Mikio Usui/BEAMS

 今年7月、名古屋大学の一角に、最新鋭の半導体装置が並ぶ1000平方メートルの巨大クリーンルームが完成した。12月には7階建ての研究棟も完成し、総工費は約50億円にも上る。

 もはや大学の実験室のレベルを超える巨大な施設は、ノーベル物理学賞を受賞した天野浩教授の研究チームが建設した。そしてこれは、イノベーションを再び生み出すための仕掛けの一つである。

 天野教授は2014年、赤﨑勇・名城大学終身教授と中村修二・米カリフォルニア大学教授と共に、青色発光ダイオード(LED)でノーベル賞を受賞した。

 この発明は、エジソンが発明した白熱電球で世界中のランプが置き換わったのと同様、世界の照明にイノベーションをもたらした。

 すでにあった赤色、緑色LEDに、天野教授らが発明した青色LEDを組み合わせることで、完全な白色光源を作り出すことが可能になったからだ。

 現在、天野教授が取り組む研究は、この青色LEDの半導体材料となる「窒化ガリウム(GaN)」のさらなる可能性の追求。光の世界を変えた省エネ材料で、再びイノベーションを起こそうと考えている。

 青色LED技術の応用は、身近なところでディスプレーの分野がある。液晶や有機ELとは全く異なる「マイクロLEDディスプレー」で、これが実用化されれば、1回の充電で1週間持つスマートフォンも夢ではなくなる。