行動するシェフ集団も現れた。水産資源の状況についての勉強会と情報発信を行う団体、シェフズ・フォー・ザ・ブルーだ。「高級レストランのコースメニューで、シーフードは重要な差別化要素。魚が調達できなくなってきているのは死活問題で、シェフの立場からできることをしようと考えた」と代表の佐々木ひろこ氏は話す。フレンチ、中華など、ミシュランの星付きレストランを含む有名店のシェフ30人が集まり、水産資源管理に取り組む漁業者と連携するなどの活動を行っている。

持続可能な漁業へと改革に立ち上がる
若手漁業者たち

 流通も動いた。イオンはまだ絶滅危惧種ではないインドネシアウナギに対して、2023年までにMSC(海洋管理協議会)認証とASC(水産養殖管理協議会)認証を取得することを宣言。これらは資源管理や持続可能な漁・養殖がなされている水産物に与えられる国際認証だ。「20年までに取り扱い水産物の20%をMSC認証品にするが、この目標はあくまでも通過点」(松本金蔵・イオンリテール水産商品部長)という。

 ちなみに、ウォルマートやコストコなどの米大手小売りでは取り扱う水産物はほぼ100%MSC認証を取得している。「欧米では小売企業が売る水産物が持続可能な手段で獲られているかどうかにNPOの厳しい監視の目が向けられている」(阪口功・学習院大学教授)からだ。日本でも消費者の意識が少しずつ変化するにつれ、ようやく流通も動き始めた。

 セブン&アイ・ホールディングスも、PB(プライベートブランド)のめんたいこなどでMSC認証品の取り扱いを始め、今後品目を増やす計画だ。「このままでは日本の水産業もわれわれも共倒れになる。持続可能な水産業を支援する取り組みを確実に続ける」と同社幹部は強調する。

 大手2社だけではない。MSC認証品を販売するために必要な加工流通認証(COC)を取得する小売業の数が急増している。

 さらに漁業者も動いた。MSC認証の取得に向け資源管理を行い、コストを払ってでも持続可能な漁業に取り組む漁業者が増えている。宮城県女川町でギンザケの養殖を行うマルキンもその一社だ。