12万票以上の「圧倒的1位」の案を排除

 だが、誰もが面白がっていたわけではない。『ガーディアン』紙によれば、大学・科学担当大臣ジョー・ジョンソンはこう述べている。

「我々が望んでいるのは、ソーシャルメディアのニュースサイクルより長持ちする名前だ」

 関係者のあいだで、ウィンガムは自然環境研究会議(NERC)の責任者として群衆の意見を抑え込み、最終的な決定を下すべきだ、という不満の声が高まった。

 かくして、5月6日金曜日、ボーティ・マクボートフェイスは撃沈された。

 NERCは巧妙というか、いささかあざとくも、極地調査船は、偉大な動植物学者であり、テレビ司会者、人間国宝としても著名なサー・デイヴィッド・アッテンボローの名にちなんで命名すると宣言した。誰も文句のつけようのない選択だった。さらに、世間の風当たりを和らげるため、調査船に搭載する無人の海中探査機のひとつを、「ボーティ・マクボートフェイス」と命名することにした。

 その後の国会の審議は、世間を騒がせたNERCをたしなめる意味合いもあったが、いっぽうで科学の伝統に則り、今回の騒動からどのような教訓を得るべきか、しっかりと議論するためでもあった。

 洞察を得るため、NERCは証人としてシェフィールド大学社会学教授、ジェイムズ・ウィルズドンを招聘した。

 ウィルズドンは、NERCのアッテンボロー作戦は「非常にそつのない妥協策」だと評したが、そのあとのひと言で、議会は蜂の巣を突いたような騒ぎになった。彼自身、じつは「ボーティ・マクボートフェイス」に投票したと認めたのだ。

 一同が落ち着くのを待ち、ウィルズドンは明確に意見を述べた。「#船に名前をつけよう」のようなアプローチは、科学の取り組みに人びとを巻き込む方法として適切とは思えない。さらに、安易に表面的な問いを投げかけても、それなりの反応しか得られないのは当然だと指摘した。

 ウィンガムは追い詰められ、群衆へのフォローアップや今後の取り組みについては、「そうした長期的な問題や、興味をどう維持していくかについては、まだ取り組みを開始したばかり」だとして、NERCには腹案がないことを認めた。

 また、さまつな質問ながら、NERCはこの問題に関して教職者などにレクチャーをすることは考えていないかと議長が尋ねたところ、ウィンガムは気取った調子で、NERCの主要な役割は「もっと高いレベル」の取り組みにあると切り返した。