米中首脳が妥協を図ろうと努めているさなかに、米国が華為の創業者でスマートフォン事業を大発展させた任正非(レン・ツェンフェイ)CEOの娘をカナダに頼んで拘束させれば、中国が激しく反発するのは目に見えていた。

 ホワイトハウス筋は「大統領はそれを知らなかった」と言い、超強硬派のジョン・ボルトン大統領補佐官(安全保障担当)は「私は知っていた」と言う。

 この2つの説明が事実ならば、米情報機関が米中和解を妨害したことになる。

北朝鮮非核化の6者協議でも
よく似た状況が起きた

 これに似た状況は2005年9月、北朝鮮の非核化で日、米、中、韓、ロと北朝鮮が合意した「6者協議」の最中にも起きた。

 6者協議の共同声明では、北朝鮮は「すべての核兵器、核計画を放棄する」ことに同意し、米国は「北朝鮮を攻撃しない。北朝鮮と米国は平和共存し、関係正常化のための措置をとる」「北朝鮮に軽水炉(プルトニウムが出にくい原子炉)を提供することを論議する」「5ヵ国はエネルギー支援をする」などを取り決めた。

 この内容は今年6月12日、シンガポールでの米朝首脳会談の合意と大筋では共通していた。

 関係する6者全員が合意した以上、この共同声明が実施されていれば、 非核化の問題は13年も前に解決し、北朝鮮が公然と2006年10月に初の核実験をしたり、長距離弾道ミサイルの開発、試射を行ったりすることを防ぐ効果はあったろう。

 だが6者協議の共同声明が出る4日前の9月15日、北朝鮮製偽ドル札事件を追及していた米財務省情報部は、マカオにあるバンコ・デルタ・アジア銀行が「北朝鮮の資金洗浄に関与した疑いが濃い」と発表した。

 同銀行は信用回復のため北朝鮮関係の約50口座を凍結し、北朝鮮に大打撃となった。

 北朝鮮は「金融制裁解除」を求めたが、米国は「制裁ではない。捜査の問題で、口座凍結はマカオの銀行の判断による」と応じなかったため、北朝鮮は6者協議に復帰せず、核と弾道ミサイルの開発を進めることになった。

外交当局と情報部門の連携とれず
偶然、最悪のタイミングで起きた?

 当時、米国は意図的に6者協議の共同声明を反故にすることを策して、財務省に調査を進めさせたわけではない。

 財務省の情報部門と米国の外交当局者の連携が全く取れていなかったため、2年間に及んだ6者協議の成果を無にすることになったのだ。