人は、人との出会いでしか変わらない

本田:私は「人は、人との出会いでしか変わらない」と思っています。積極的に出会いを求める人のほうが、人生がおもしろくなるし、運が開けやすくなる気がしています。

竹中:本田さんは、人と人のつながりをとても大切にされていますよね。『大富豪からの手紙』の「第1の手紙【偶然】」の中でも、本田さんはこう書いています。「自分の努力で得たわけではない『つながり』は、実にたくさんあるんだよ。ある意味では、『人智では測ることができない計らい』によって、キミのもとにやってきている『つながり』だと言える」と……。

本田:人生が大きく変わったり、生活パターンがガラリと変わったときというのは、そのきっかけとして、「誰かと出会っていること」が多いと思います。

竹中:私もそう思います。たとえば私の場合なら、ハーバード大学のデイル・ジョルゲンソン教授とアンドリュー・B・エーベルとの出会いが、大きな影響を与えてくれました。
デイル・ジョルゲンソン教授は、「計量経済学」の大家と言われていて、資本コストと投資、生産性の分析、経済成長理論の実証分析、国民経済計算の分野で貢献のある方です。
ハーバード大学に留学してすぐ、私は英語もろくにできないのに、ジョルゲンソン教授の研究室を訪ねたんですね、それはもう、ドキドキしながら。
するとジョルゲンソン教授がこちらの意思を汲み取ってくださり、「付いてきなさい」といって、隣の研究室にいる若い研究者を紹介してくれました。この若き研究者が、アンドリュー・B・エーベルです。年齢は、私よりも1、2歳年下だったと思います。
ジョルゲンソン教授は、「エーベルの理論が世界の最先端です。彼から、いろいろ吸収しなさい」と言って、私の研究を後押ししてくださいました。ジョルゲンソン教授もエーベル氏も、惜しみなく世界最先端の理論を私に授けてくださったんです。
そして、帰国後に、日本とアメリカの設備投資を比較研究して、論文としてまとめたものが、のちにサントリー学芸賞を受賞した『研究開発と設備投資の経済学 ―― 経済活力を支えるメカニズム』(1984年)だったんです。

本田:アメリカと日本では、設備投資にどのような違いがあるのですか?

竹中:当時はですね、アメリカに比べて、日本のほうがはるかに長期的な視点で投資をしていました。アメリカは、「今年の収益」が上がらないと株主総会で叩かれてしまう。だから、目先の収益が大切で、長期的な視点を持てなかったんです。
一方で日本の場合は、銀行が支配権を持っていましたから、「今年は駄目でもいい。10年かけて成長すればいい」と考えていました。だから日本は、長期的に成長することができたんです。
けれど今は、「まったくの逆」です。日本の企業ではコーポレート・ガバナンスが十分に効かなくて利益が上がらないのに、社長が交代しない。
アメリカは熾烈な競争の中にあるので、新しいものがどんどん出てきて、どんどん成長しています。こうした変化を見ると、「真理はひとつではないし、その時代の文脈の中で変化するものだ」ということに気づかされますね。

第3回に続く