社会格差をなくすために、今の日本にできること

「AかBかの選択肢の中で、Cを考える力」が必要となる本田健(ほんだ・けん)
作家
経営コンサルタント、投資家を経て、育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。「お金と幸せ」「ライフワーク」「ワクワクする生き方」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は3500万ダウンロードを突破。著書は、100万部を突破した『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房)など、著書は130冊以上、累計発行部数は700万部を突破している。2017年にはアメリカの出版社Simon & Schuster社と契約。初の英語での書下ろしになる著書はヨーロッパ、アジアなど世界25ヵ国以上の国で発売されることが決まっている。(Photo by 森藤ヒサシ)

竹中:「国際通貨基金(IMF)」のチーフエコノミストを務めたラグラム・ラジャンが、『フォールト・ラインズ』(新潮社)という本を書いています。
フォールト・ラインズとは、「断層線」の意味で、ようするに「今の経済社会には、格差の問題に象徴されるような『大きな断層』があって、それが拡大している」とラジャンは指摘しています。
アメリカは、世界でも格差の大きい国です。断層の下にいる人々は、格差を目の当たりにしたときに、「誰か」や「何か」のせいだと考えて、自分以外の悪者を見つけようとします。たとえば、「メキシコからの移民が悪い」とか「自由貿易が悪い」とか……。
彼らの不満が溜まってくる中で登場したのが、ポピュリストのトランプです。彼は「おまえたちは、損しているぞ。俺が何とかしてやる」と大衆を煽って、人気を得たわけです。

本田:でも考えてみると、同じことがイギリスでもイタリアでも起こっていて、「ポピュリズム(大衆の不安、不満、恐れを利用して、エリート層や高所得者層と対決しようとする政治思想)」の流れが世界に広がっている印象です。
日本の政治も、耳当たりの良い政策を羅列しながら、「小さなポピュリズム」の争いをしているようにも見えます。

竹中:そのとおりですね。でも、社会の分断をなくす(格差をなくす)ための政策というのは、どの国もまだ十分には採っていないのですよ。

本田:竹中先生は、どうすれば、今の日本の「格差や分断」をなくすことができるとお考えですか?

竹中:日本に必要なのは、「改革のギア」をさらに数段上げること。そして、それに伴う痛みに対応すべく、「社会的セーフティーネット」の整備・拡充を急ぐことです。
現行の社会保障制度の根幹を代替するような「ベーシックインカム(最低限の生活を保障するために国民に一定額を支給する最低限所得保障制度)」の導入も真剣に議論すべきだと考えています。

本田:私も、個人的にはベーシックインカムは賛成なのですが、「人間の尊厳を奪う可能性がある」と反対する声もあります。

竹中:日本には「生活保護法」がありますが、生活保護法は、決して人権を無視した制度ではありませんよね。逆です。人権を守るための制度です。なので、「制度そのものに問題があるのではなくて、制度のつくり方の問題」だと思います。もし「ある制度」に問題点があるのであれば、その制度を、柔軟に変えればいいのです。