教皇が使っている、人を動かす「3大スキル」

(中略)
 フランシスコがどのように課題に取り組んだかを見ていくため、ニューパワーの世界でリーダーに求められる3つのスキルに着目しよう。

1.「シグナル」を送る
 ニューパワーのリーダーは、言葉遣い、ジェスチャー、行動をとおして群衆を鼓舞する。オバマの「私たちが待っていたのは、私たちなのです」という表現は、典型的なシグナル(合図)であり、支持者たちの自主性や、参加したいという意欲をかき立てた。

 教皇フランシスコが、人びとに祝福を授けるのでなく、「祈ってください」と頼んだのも、同じ効果を発揮した。

2.「仕組み」をつくる
 ニューパワーのリーダーは、人びとの参加と自主性をうながすため、仕組みと活動をつくる。これはシグナルを送るよりはるかに難しい。

3.「規範」を示す
 ニューパワーのリーダーは群衆に対し、規範や全般的な方向性を示す。とくに、自分の形式的な権限を超えて、広く長く受け継がれるべきものを示す。優れたリーダーが示した規範を、群衆がよく理解し、従い、守り続けていけば、リーダーがいなくてもうまくいく。これから見ていくとおり、現在80代の教皇フランシスコの究極の願望は、自分の任期が終わったあとも、カトリック教会の規範が受け継がれていくことだ。

スキル1:「シグナル」を送る――現代のイコンは一瞬で拡散する

 またたく間に、教皇は世界でもっとも人気のある指導者となり、宗教の違いも超えて、高い好感度を獲得した。無神論者にさえ高く評価されている。

 これほどの人気をもたらしたのは、教皇の卓越したシグナルのスキルだ。彼は教皇に就任したとき、自分はこれまでとはちがうタイプの教皇であるということを示し、人びとの心を惹きつけた。やがてそれは、この教皇の任期の特徴となった。

 フランシスコほど思い切った、象徴的な意思表示をした教皇は、過去にもほとんどいない。たとえば、教皇専用のメルセデス・ベンツには乗らず、大衆車であるフォードのフォーカスを選んだ。サン・ピエトロ大聖堂前の広場では、重度の障害のある男性を祝福し、抱擁した。あるときは、自ら難民たちの足を洗った。こうしたシグナルは、枢機卿たちや信徒たちに、弱き者に対してどのように振る舞うべきか、明確なメッセージを伝えた。

『ナショナル・カトリック・リポーター』紙のシニア・アナリスト、トーマス・リーズ神父の言葉を借りれば、このようにして、教皇フランシスコは「生ける寓話」になった。彼が打ち出すイメージや、人びとの胸を打つ瞬間は、現代の聖画像(イコン)となった。かつては修道士の小部屋の壁に描かれ、教会の壁にひっそりと掛かっていたイコンは、いまはインスタグラムであっというまに拡散するのだ。