――認知症にも歯周病菌が関係していることに驚きました。

 認知症の中でも多くを占めるアルツハイマー型認知症に関係しているとみられているのが、アミロイドβという脳内で作られるタンパク質です。これが脳内に蓄積し、脳細胞を死滅させることが発症の一因になっているというのです。

 このアミロイドβは、ギンギバリス菌が多いほど、蓄積が多いことがマウスを使った感染実験でわかっています。つまり、ギンギバリス菌は脳のアミロイドβの沈着を促し、アルツハイマー型認知症の発症リスクを上げると考えられるのです。

 アルツハイマー型認知症で亡くなられた方とそうでない方の脳を調べた研究があります。それによると、アルツハイマー型認知症で亡くなられた方10人のうち、ギンギバリス菌の毒素LPSが脳から検出されたのは4人。一方、アルツハイマー型認知症でなかった方からは、誰一人として検出されませんでした。この結果から、ギンギバリス菌の毒素LPSが脳に侵入し、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高めることが推測できます。

 また、英国科学誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された九州大学研究グループの発表でも、ギンギバリス菌の毒素LPSがアルツハイマー病を悪化させる病原因子であることを示しています。

――歯周病を放置することがいかに恐ろしいか、痛感させられる内容ばかりです。

 これまでに挙げた疾患は一例にすぎません。糖尿病、関節リウマチ、早産、低体重児出産、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)、クローン病、潰瘍性大腸炎、大腸がん……など、歯周病との関連が指摘されている疾患は多岐にわたります。動脈硬化と歯周病の関連についてはすでに述べていますが、循環器の外科医の中には、歯周病のコントロールが極めて悪い患者さんに対し、緊急の場合を除き、歯周病治療を行ってからでなければ、心臓病の手術を行わない医師もいるほどです。

歯が少ない人ほど、
栄養不足で健康維持は難しくなる

――「(歯周病で)歯を失い咀嚼が難しくなることでの栄養低下」によって、臓器の健康を左右するとも、花田教授は指摘されています。

 栄養と歯の関連についてもエビデンスが出ています。歯周病や虫歯などで歯を多く失っている人は、食品の選択力に問題があり栄養バランス失調の状態に陥っていると考えられます。また、もともと食品の選択力に問題があった人が、歯の痛みや歯を失ったことで硬いものを避けるようになりますます栄養が不足するようになる症例も多いと思います。