国際情勢の目まぐるしい変化が国政や金融市場を振り回しています。特に近年、海洋進出問題が著しい中国をはじめ、混迷する東アジア情勢の動向に、私たちは目が離せません。今後、日本と東アジアの関係はどうなっていくのでしょうか――?駿台予備学校・N予備校で受験生に世界史を教える茂木誠氏が今回から3回にわたって東アジア情勢についてわかりやすく解説します。
防衛大綱を見直すことになった
最大の要因とは…
安倍政権は2018年の防衛大綱の見直しで、ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」型2隻の甲板を耐熱改修して、戦闘機の離発着を可能にすることを決めました。名前は「護衛艦」ですが、事実上の空母にするという決定です。これと同時に、航空自衛隊は垂直離発着が可能な米国製ステルス戦闘機F35-Bを45機、調達します。
トランプ政権が要求する対日貿易赤字の解消を兵器購入でかわすという側面もありますが、最大の要因は南西諸島方面における中国の軍事的脅威に対抗することです。
政府と自衛隊幹部との調整機関である国家安全保障会議(NSC)の設置、平和安全法制(いわゆる有事法制)の整備、石垣島への自衛隊の配備計画などは安倍政権下ですでに実現し、今後は憲法9条の改正(自衛隊の明記)を目指します。これらの動きはいずれも中国の軍拡に対処するためのものですから、これまで戦争を忌避してきた戦後日本をここまで変えた最大の功労者は、習近平国家主席その人である、ということができるでしょう。
なぜ西側諸国は中国共産党政権を
支援し続けたのか?
ロシア(ソ連)と違って中国は、毛沢東が確立した共産党の一党支配体制を維持したまま、1970年代から積極的に外国資本を導入し、経済の自由化を進めてきました。鄧小平が唱えた「改革開放」政策です。日本もこの路線を政財界あげて支援し、ODAをはじめとする対中援助は総額で6兆円に達しました。中国の安い労働力と広大な市場という経済的利益の確保に加え、経済発展が中国国内の民主化を促し、周辺諸国との緊張を和らげるだろうという楽観論が日米両国で主流となっていたためです。