来年の米貿易赤字拡大はほぼ確実なようだ。そうなれば米経済に重要な影響が及ぶだろう。だが投資家は、政治的な影響も同じくらい気にかけておく必要がある。ドナルド・トランプ米大統領は貿易赤字の縮小を言明してきたが、今年は1~10月で5030億ドル(約55兆8000億円)と、前年同期の4510億ドルからむしろ拡大している。原因の少なくとも一部はトランプ氏自身の政策だ。昨年同氏が法案に署名して成立した減税によって米消費者の手元に残るお金が増え、その一部が輸入品に使われた。また、米国が追加関税を導入するとの懸念を受け、米企業は節約のために輸入を前倒しした。海外経済は脆弱(ぜいじゃく)そうだ。イタリアは景気後退に近く、フランスでは反政府デモでビジネスが混乱し、センチメントが悪化している。英国は欧州連合(EU)離脱で混乱の淵にある。中国の景気減速は鮮明化しており、アジアの新興国市場に波及的影響を及ぼしそうだ。こうした現象を受けて米国の生むモノやサービスへの需要が減退する一方、旺盛な個人消費が続く米国は格好の輸出先となっている。