共有地の悲劇の典型がマグロ乱獲。太平洋クロマグロ漁の規制が始まったが、難題も多い

 囚人のジレンマは社会全体でもよく観察され、事態を悪化させている。マグロの乱獲、地球環境問題など、社会における囚人のジレンマは、「共有地の悲劇」と名付けられている。

 ビジネスの現場では価格競争などがこれに当たる。競合他社が値下げしてくると、自社も対抗しないと市場を失う。相手が価格維持のときも、自社だけが値下げに踏み切れば、市場を奪取できる。値下げは支配戦略なのである。

 だが、こうしてお互いが値下げに走ると競争が激化し、疲弊する。ガソリンスタンドのような同質財では往々にしてこうなる(消費者には利益をもたらす)。

 職場でも「必ずやらなければいけない面倒な仕事を、誰がやるか」などは同じジレンマに陥りがちだ。いざやるとなると、「何で自分だけが」と不満たらたら。皆、自分の仕事だけしてそこで成果を挙げたい。だが、皆がやらないと、職場の業務が回らなくなる……というわけである。