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「働き方」という経営問題―The Future of Work―

ワークライフバランスが気になるのは
「自分の仕事に意味がない」と感じているから

――米国の労働環境調査会社CEOが語る

末岡洋子
2019年2月1日
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働きやすさは業績に反映される

Great Place to Work InstituteのCEO、マイケル・ブッシュ氏

 働きがいは単に従業員のリテンションにメリットがあるだけではない。業績にも良い影響が出ているという。

 GPTWに登録している6000社の売り上げは2017年、前年比26%増加した。上位100社について、ラッセル3000指数とリターンを比較したところ、20年で3倍の差があったという。働きがいのある企業が業績も良いということはデータで証明できるとブッシュ氏は断言する。「企業文化と業績にトレードオフはない」(ブッシュ氏)。

 日本だけでなく米国でも注目されているワークライフバランスについても、「ワークライフバランスが持ち上がるのは、自分の仕事に意味がないと感じているから」と見る。「自分がやっている仕事に意味があると感じている時は、働き、休憩し、また働く。”疲れた”とはいうかもしれないが、ワークライフバランスが持ち上がることはない」と続けた。

 従業員がやっている仕事に意味があると感じてもらうのはリーダーの仕事、とブッシュ氏はいう。そのためには、「聞くこと」それに、「その人の仕事が自社の戦略にとって重要であることを伝えること」をきちんと行う必要があるとアドバイスした。

“従業員ファースト”は顧客もハッピーにする

 GPTWで上位の会社は、「働きがい」にどのように取り組んでいるのだろうか? 企業文化をテーマとしたディスカッションで、中古車売買のCarMax(GPTWランキング34位)の最高情報責任者兼シニアバイスプレジデント、シャミム・ムハンマド(Shamim Mohammad)氏は、「従業員がどのようにオペレーションするのかを定義するOS(オペレーション・システム)のようなもの」と定義した。営業所ごとにサービスの質が大きく違ったり、雰囲気が大きく異なる場合、OSが機能しているとはいえないということになる。同社の企業文化は“ピープル・ファースト(最優先)”。顧客だけを最優先させても、社内のメンバーがいがみ合っている状況は起こりうる、とムハンマド氏。“ピープル”とすることで、従業員、取引先、顧客、コミュニティと人を大切にする文化を植え付けようとしているという。

 住宅ローンのQuicken Loansは「ISM」として、約20の約束を掲げている。その中には、「より良い方法を見出すことに固執しよう」「ノーの前にイエスを」などがある。同社のチーフ・ピープル・オフィサーのマイク・マロイ(Mike Malloy)氏は、このISMは「譲れない、妥協の余地のないもの」という。同社に入社する社員は全て研修を受けるが、ここで10時間ほどを費やしてISMの重要性を説明するなどして理解し、浸透させ、実践してもらっているという。ISMの1つとして、全ての顧客のメールや問い合わせに24時間以内に応答することを目標としているが、従業員に無理強いすることはしない。幹部の部下へのメッセージは、「対応できなければ自分に回せ」だ。「幹部はチームメンバーに、チームメンバーは顧客にコミットする」とマロイ氏は背後にある哲学を説明した。

 働きがいは、技術面でも支援できる。CarMaxはモバイルとクラウドを利用して、営業担当がいつでも・どこでも単一のインターフェイスで情報にアクセスできる環境を整えた。Quicken Loansもモバイルとクラウドを利用し、物件が表示されるまでのステップを短縮するなどの体験改善を図っているという。

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末岡洋子

すえおか・ようこ/フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

「働き方」という経営問題―The Future of Work―

人口減少による働き手の不足と経済・社会のグローバル化が、企業経営を取りまく大問題となっている。そのなかで、企業が競争優位性を築くためのキーワードとして浮上しているのが「ワークスタイル変革」だ。識者への取材や企業事例の紹介を通じて、すべての企業と働く人に問われている「働き方」の課題を明らかにしていく。

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