日本のコンビニやスーパーで必ず聞かれるのが「ポイントカードはよろしいですか?」というフレーズ。

 以前に日本に住んでいたときは、ポイントカードの有無を問われ、なければ「作りますか?」とぐいぐい聞かれた記憶がありますが、ちょっとニュアンスが変わったような気がします。「お得なポイント、捨てちゃっていいんですか?」みたいなトーンというか。気のせいかもしれませんが。

 先日行ったドラッグストアでは、PONTAと小田急、そしてそのドラッグチェーンの3つのポイントが獲得でき、ドラッグストアのポイントは3倍の日だったそうです。また下の階にある小田急系のスーパーもポイントに倍率がかかっている日だったそうで、レジに並ぶ人は器用に財布からポイントカードを選り抜いていました。

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主要ポイントサービスの中では、PONTAはiPhoneやApple WatchのWalletアプリに登録できますが、これはやや例外的で、国内でのiPhoneの高シェアを考えると、案外活用されていない状況があります

米国でもチェーン主導でポイントカードがあるが
携帯番号の入力で済むケースが多い

 米国にもポイントカードはあります。スーパーマーケット、ドラッグストアなどのチェーンは独自のプラスティックのポイントカードを発行していて、レジにある端末に自分でスライドさせ、続けて決済のためのクレジットカードを自分で挿入するという手順で会計を進めます。

 しかし、ポイントカードを入れていくと、財布はどんどん膨らんでいくばかり。そのためポイントカードと電話番号を紐付けておき、決済端末に自分の電話番号を入力することで、ポイントカードを読み込ませるのと同じになる仕組みが採用されています。これなら、常に大量のポイントカードを持ち歩かなくても、自分の携帯番号さえ覚えておけばきちんとポイントを貯めることができるわけです。

 日本の場合、カードを自分で読み込ませるようなレジは無く、操作するのは決まって店員さんであることが多いです。なので、電話番号でポイントカードを代用できる仕組みになっていたとしても、いちいち口頭で電話番号を伝えなければならないなら、余計面倒ですよね。

Apple PayやiPhoneは日本ではあまり頼りにならない

 そこで取り出したるはiPhoneやApple Watch。「Wallet」アプリには、クレジットカードのほかに、Suicaや航空券、ポイントカード、プリペイドカードなどを読み込ませることができ、NFCによる非接触決済、あるいはバーコードによる決済などを利用できるようになっています。

 たとえば米国のStarbucksや、ドラッグチェーンのWalgreensは、Walletアプリにプリペイドカードやポイントカードを読み込ませることができるうになっています。またクレジットカードだけでなく銀行のキャッシュカード(デビットカード)も登録できるため、本当にiPhoneだけで普段の買い物が成立する状況になっています。

 これだけショップのポイントカードや共通ポイントが乱立する日本でも、Walletアプリを利用して、プラスティックカードを持ち歩く必要がなくなれば、メリットは大きいのではないかと期待が膨らみます。

 しかしながら、現時点でWalletに読み込ませることができたのはPONTAカードぐらいで、dポイントもスターバックスカードも、独自のアプリ内でバーコードは表示させることまではできても、Walletには登録できず……。さらに、ドラッグストアや小田急ポイントなどはアプリにすら入れられず。

 これは明らかに財布の見直しが必要となる状況であることを認識せざるを得ません。日本では意外とiPhoneはポイントカード武装には向いていないということがわかりました。というか、ユーザーの利便性を念頭にアプリやスマートフォンの機能を使いこなしていない業者に対しては「誰の利便性を優先しているのだろうか」という疑問が湧いてきてしまいます。

とはいえ、個人情報を垂れ流してまで得すべきか

 ポイントカードの利用方法そのものについても考える必要があると思いました。ポイントが付与されていると言うことは、なんらかの対価になり得る情報が蓄積され活用されうる可能性があるということです。

 テクノロジーを用いたサービスは、もちろんエンドユーザーの体験やメリットをアピールしながら普及を進めることがほとんどである一方で、本当に最大のメリットをだれが享受しているのか、自分はそのサービスの「顧客なのか」という点を考える必要もあります。

 共通ポイントのビジネスモデルは、マーケティング活用などそのデータベースにあると思いますが、それでも顧客の利便性を最大限に追求したPONTAと、そこが不十分なdポイントやTポイントでは筆者は異なる印象を抱いてしまいます。

 その取り扱いに対しては、どんな情報が蓄積されているのか、どのような運用を行なっているかという実際のところと、消費者側が抱くイメージの問題があります。まさにその部分で当局への協力に関連する報道でネガティブな面が際立ってしまったのがTポイントでしょう。

 たとえ蓄積されているデータが匿名化されていたとしても、他の公開されている情報とのマッチングが図られれば、どの人の情報なのかを特定することができてしまいます。

 その「他の公開されている情報」とは、たとえばFacebookやTwitter、Instagramのように、人や人格、場所、写真、友人関係などの具体的な情報を、ユーザー自ら掲載・公開している状況のことです。米国や欧州では、Facebookの情報流用によるプライバシー問題だけで大きな報道がなされ、財布の紐ならぬ個人情報の紐がキュッと締まりました。

 日本は良くも悪くも、プライバシーに対して楽観的すぎるように映ります。あるいは、この問題への理解がなんらかの原因で止まってしまっている可能性も疑うべきかもしれません。


matsu

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

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Twitterアカウント @taromatsumura