組織的な隠ぺいの可能性
総務省にはウソの説明

 担当課の単なる手続き無視だとは考えにくい厚労省の組織的な関与を疑わせるのが、調査を行う担当者向けに作成された「事務取扱要領」の改変だ。

 抽出調査に切り替えた2004年から使われていた「事務取扱要領」には「規模500人以上の事業所は東京に集中しており、全数調査にしなくても精度が確保できる」と記述されていた。

 ところが安倍政権になっていた15年には、「事務取扱要領」から、東京都の抽出調査を容認する内容が削除された。

 削除は、統計委員会が「毎勤」の調査手法を審議することを決めた直後だったという。このタイミングで審議が決まったのは、「毎勤」の調査手法の点検が1992年以降行われていなかったことが理由だった。削除は、抽出調査がルール違反だと認識した上での、発覚を逃れるための工作だったとみられる。

 翌16年には、厚労省は明確なウソをつく。10月27日付で厚労省が総務省に提出した書類には、従業員500人以上の事業所について「全数調査継続」と記載していた。

 書類は、厚労省の雇用・賃金福祉統計室が作成、当時の塩崎恭久厚労相名で総務省に提出していた。統計室の当時の参事官(課長級)は統計委員会に出席し、口頭でも全数調査の継続を説明したという。明らかな虚偽説明だった。

 だが、この件についての監察委の中間報告書は、「だいぶ前から抽出調査で行われており、わざわざ(事務)要領に書かなくてもよいと考えた」と、当時の担当課長がヒアリングに対して説明した内容をそのまま記述し、「抽出調査であることを隠ぺいする意図があるとまでは認められなかった」と、深く調査した様子はない。

「事務取扱要領」から抽出調査を容認する部分を削除するのは、担当者だけが知っていてできるものではない。要領は、マニュアルとして歴代の担当者に引き継がれており、削除に直接関与した職員が何人いたかは別として、ルール違反であることを知りながら「毎勤」に関わっていた職員が多数いたとみるのが自然だろう。

18年から「データ補正」
賃金の大幅上昇に疑問続出

 最大の疑問点は、18年1月分の「毎勤」から、不正なデータを本来の全数調査に近づける「データ補正」をひそかに始めたことだ。

 抽出調査の場合、集計の際にはデータを「復元補正」し、母集団全体の調査結果に近づけるのが通常なのだが、厚労省は04年に抽出調査に変えて以降、この補正も行わず、抽出した事業所だけの調査データを使って集計を行っていた。

 それ自体も問題なのだが、データ補正を18年1月に始めるに際して、そのためのシステム改修までしたのに、データ補正を公表しないまま、その後、「毎勤」数値を発表し続けていた。