2018年に京王と東急で有料着席列車を設置したことで、都内の大手私鉄全社に座席指定列車が存在することになった。そもそも、有料着席サービスはいつから始まったのか、有料着席サービスを運行するメリットは何かなどを語った上で、3月に行われるJRのダイヤ改正でどんな変更があるのかについてお伝えしたい。(鉄道ジャーナリスト 渡部史絵)
2018(平成30)年2月22日に京王電鉄(以下、京王)の本線・相模原線に座席指定の「京王ライナー」が登場し、12月14日には東京急行電鉄(以下、東急)の大井町線で急行に座席指定車Qシートの連結が始まった。いずれも夕方の通勤時間帯に運行される帰宅時の有料着席サービス列車で、沿線の通勤者にとっては大変ありがたい存在だろう。
関東圏では以前から有料の座席指定列車が各路線で運行されている。今回この2社が参入したことで、東京都内の大手私鉄全社に座席指定列車が存在することとなった。なお、有料の座席指定に関し、ホームライナーやロマンスカーなどは意味合いが変わるため、本記事において以下、「有料着席サービス」としている。
首都圏で通勤座席指定列車を
最初に導入した鉄道は?
では、なぜ各社は座席指定列車を走らせるのだろうか。その答えの前に通勤座席指定列車の歴史について見てみたい。関東で最初にこのような列車を走らせたのは小田急電鉄(以下、小田急)だった。小田急線は、昭和20年代から新宿と箱根を結ぶ特急を走らせており、新宿~小田原間は無停車だった。
ある日、箱根から新宿に到着し、回送列車として車庫に帰る電車を見た乗客から「この電車に乗せてくれたら通勤が楽になるのに…」という言葉を聞いた社員が、通勤特急の提言をしたといわれ、1967(昭和42)年から、車両基地のある相模大野への回送列車を新原町田(現在の町田)まで客扱いを行った。