敵を引きずり降ろすため
記者に「情報提供」する役人たち
確かに、民間企業でも、相手に悟られないようにICレコーダーをまわす「秘密録音」という話をよく聞くのは事実だ。
だが、それらはパワハラやセクハラを受けている被害者が、その証拠を掴むために行っていることが圧倒的に多い。一方、役所で蔓延する「盗聴」というのは、被害者の自衛手段というわけではなく、「敵」を引きずり降ろすための攻撃材料探しを目的としたものが多いのだ。
どういうことかというと、今回の明石市のケースがわかりやすいだろう。
ご存じのように、泉氏が暴言を吐いたのは2017年6月のことだ。パワハラ市長によって、心身ともに追いつめられた被害者が我が身を守るため、止むに止まれず盗聴をしたのものであれば、1年7ヶ月も寝かせておくわけがない。
4月の市長選で3選を目指す意向を明らかにした3日後、メディアが足並みを揃えて報じたことからも、泉氏の再選を阻止したい人々が、タイミングを見計らってメディアへリークしたのではないかという疑念が当然浮かぶ。
かく言う筆者も記者時代には、「敵を引きずり降ろしたい役所の人」からよくリークを受けた。
「視察旅行で、議員が女性職員にセクハラしました。音声もあるのでなんとか記事にできませんか」
「庁内で不倫している音声があります。これは大問題なので取材してください」
「市長は業者に接待をさせている。その時の会合の音声があるのでどうでしょう」
一体どういうやり方で録音したのかと聞きたくなるような音声データとともに、みな生き生きとした表情で、嬉しそうに情報提供をしてくれるのだ。選挙という「政治の季節」になると、こういうタレコミはさらにヒートアップする。どういう経緯で筆者の携帯番号を入手したのかわからない、会ったこともないような人からも情報提供がくるのだ。