楽天は、17年に住宅不動産サイトのライフルと提携し、楽天ライフルステイを設立。楽天の出資比率は51%で、太田宗克社長は楽天トラベル出身だ。

 民泊は外国人に人気が高く、エアビーは世界191カ国で展開している。楽天ライフルステイは外国人取り込みのために、世界最大のオンライン旅行会社の米エクスペディア傘下で民泊を扱う米ホーム・アウェイと提携した。同様に、中国の途家、台湾のアジア・ヨーなどの民泊仲介サイトのほか、オンライン旅行会社の蘭ブッキング・ドットコムとも提携した。

 他方で楽天ライフルステイは物件供給を増やすためにもさまざまな手を打っている。その一つが「RAKUTEN STAY」という民泊物件ブランド。民泊になじみがない宿泊者には、楽天ブランドが付くことで安心感を与え、不動産会社にとって予約につながりやすい。場所によっては賃貸より宿泊の方が収益性が高いこともあり、RAKUTEN STAYの説明会には不動産業界関係者が多数、押し寄せる。

 普通、仲介サイトは物件供給者との競業を避けるために、自らのブランドをつくらないものだが、「民泊はまだスタートしたばかり。成功事例を見せることで市場を広げていく」と太田社長は言う。

 民泊の運営では、予約してから宿泊するまでに何度もメールのやりとりをしたり、宿泊者との鍵の受け渡し、清掃、いざというときには駆け付けるなど、いろいろと手間がかかる。楽天ライフルステイはそんな運営代行も一括して行う。「不動産会社や物件のオーナーに対して、民泊の建物を造って楽天ライフルステイに丸投げすれば利益を出すと言っており、それだけ楽天さんも物件集めに必死なのだろう」(不動産コンサルタント)。

 同じ地域で幾つもの民泊物件を運営すれば、それだけ効率化が進むからだ。

 楽天ライフルステイの民泊物件を国内最大手の楽天トラベルでも紹介する計画で、グループを挙げて攻勢を強めようとしている。別の見方をすれば、ホテルや旅館は民泊との競争に一層さらされることになる。

民泊関連産業とコンソーシアム
イメージアップへ

 対するガリバーのエアビーは、民泊新法施行で失った物件数のリカバーに動きだした。さきほどの図のように、ファミリーマートや損害保険ジャパン日本興亜、セコムなど民泊関連サービス分野を含めて36社とコンソーシアムを組んだ。DeNAトラベルを買収してオンライン旅行で国内2位になったエボラブルアジアと提携し、同社の子会社のエアトリステイが運営代行をワンストップで請け負う。

 エアビーの田邉泰之代表は、民泊新法による混乱を気にしていないというが、掲載物件数激減によるダメージが相当に大きかったことは容易に想像できる。予約キャンセルによるホテル代の補填などに11億円もの経費を見積もる。

 エアビーは民泊関連産業とコンソーシアムを組み、準備や運営でオーナーの手間を省くことで、少しでも物件数の拡大につなげようとしている。最近では、認可手続きで挫折した物件オーナーに積極的にアプローチしている。

 民泊新法施行前は、民泊市場はエアビーの独壇場だった。だが施行後、これまで様子見をしていた不動産会社が民泊物件の開発に乗り出し、楽天が本格参入したことから無風ではなくなった。成約率が高いサイトの方が、物件オーナーから宿泊特別プランの提供などで有利な条件を引き出せる。そうなれば、優勝劣敗が明確になる。

 他方、地方は農泊など合法民泊のみを掲載してきた百戦錬磨が強かった。漁業体験などのアクティビティーにも定評がある。JTBと資本業務提携しており、エアビーや楽天ライフルステイとはビジネスモデルが異なる。

 地方での民泊は、物件紹介や税制などの優遇において自治体の協力が欠かせない。自治体は空き家の有効活用と観光客の誘致の面で民泊に興味を持っている。自治体との提携競争も中期的には起こるかもしれない。

 民泊新法でエアビーの独占が崩れたように、さまざまな地殻変動が起きようとしている。