注文された靴は、国内の職人によって丁寧に作られ、注文から4週間で自宅に届く。この品質とスピードを実現できるのは、同じ工場で定番を作り続けることで職人が熟練するからだ。福谷氏は、「工場まで適切に管理できなければ、本当の改革はできない」と話す。

「足型計測アプリの開発など、いくら“川下”の改革に力を入れても、“川上”である工場が新しい作り方やスピード感についていけなければ変わることができません。昨年はZOZOスーツが注目を浴びましたが、オーダーから手元に届くまで、かなり時間がかかっていると聞いています。これだけ技術革新が起きていても、服や靴の製造は100年以上前からほとんど変化してこなかった。3Dプリンタを使ったとしても、1つの木型を作るのに半日以上かかるんです。ZOZOスーツも一人ひとりに合わせて型を調整するので、工場の生産が追い付かないのでは…と思って見ていました。当社は、メーカーと一緒に考えながら工場のオペレーションを改善していますが、業界全体が次のステージに行くためには、川上の改革こそが重要だと考えています」(福谷氏)

 実際にキビラは、工場の生産ラインが効率的になるよう、発注をデザインごとに集約したり、需要予測を立てて計画生産を可能にしたりと、川上改革にも取り組み続けている。

靴ブランドにも生きる
ユニクロで学んだ成功法則

 定番商品を低価格で販売し、徹底的に効率化を図る戦略は、「ユニクロ勤務時代にたたき込まれました」と福谷氏は語る。福谷氏は、野村證券時代に資産運用の営業マンとしてファーストリテイリングの上場を担当した縁で、柳井正会長の誘いを受け、同社に転職した経歴を持つ。そこで、ユニクロの成功法則を学んだという。

「ユニクロは上位60品番で売り上げの50%を、上位200品番で売り場全体を作り上げています。品番を絞るのはMDにとって不安なものなんですが、ユニクロは常に商品を安定供給できるようあえて絞り、絞っても勝負できるよう誰もが着る定番をそろえていました」(福谷氏)