毎年3月1~8日は「女性の健康週間」だ。
各地の啓発イベントはもっぱら妊娠・出産関連のテーマだ。人生100年時代の昨今、更年期からそれ以降にも目を向けたい。
さて、働き盛りに生活習慣病を発症しやすい男性と異なり、女性の脂質異常症や高血圧、高血糖が表に出始めるのは50代後半の更年期以降だ。
女性の健康を支えてきた「エストロゲン(女性ホルモン)」の分泌が減少するためで、重大な脳・心血管疾患のリスクも上昇する。
更年期以降の女性患者が圧倒的に多い心血管疾患の一つに「微小血管狭心症」がある。
心臓に栄養を送る太い冠動脈が狭くなり生じる「狭心症」に対し、微小血管狭心症は、検査画像に映らない0.1ミリメートル(100マイクロメートル)以下の細い血管が狭くなる、あるいはけいれんを起こし、血液の循環が滞ることで生じる病気。実に、更年期女性の10人に1人の割合で見つかるといわれている。
主な症状は一般的な狭心症と同じく胸の痛みだが、活動しているときに「がっ!」とくる狭心症発作とは違い、(1)安静時でも発作が生じる、(2)細く長く、時には30分から一日中痛みが続く、などの特徴がある。
また女性の場合、背中や首、側頭部にかけての痛み、胸や喉のつかえ、倦怠感など、一見、心臓とは関係がなさそうな症状が表れる。本人もまさか「心臓の病気」とは思わず、整形外科や心療内科などを受診するケースも少なくない。
また、病気そのものや自覚症状の性差に関し、医師の認知度が低いため、更年期障害や消化不良、胸痛を伴う逆流性食道炎と誤診されることも珍しくはない。しかも通常の心血管造影検査では細い血管の異常を検出できないので、正しい診断を得るまでが一苦労だ。
更年期世代で思い当たる症状がある人は、「性差医療」に力を入れている循環器内科、あるいは婦人科を受診しよう。女性外来を標榜する診療科であれば、なおいい。
微小血管狭心症の治療は、高血圧の治療に使われるカルシウム拮抗薬(飲み薬)が中心。生活習慣では禁煙が最優先である。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)