電子ビーム描画装置で世界一
知られざる「超実力派」企業とは
携帯電話やパソコンなどのデジタル機器に高密度のLSI(大規模集積回路)が使われていることは、よくご存じだろう。
LSIの回路はフォトマスクと呼ばれるガラス基板上に描かれ、それをシリコンウエハ上に縮小転写して形成される。このフォトマスク上に回路を描く機械を、電子ビームマスク描画装置という。
八王子市に本社を置くエリオニクスは、従業員100名ながら、この研究開発用電子ビーム(以下、EB)描画装置で世界一の企業だ。まだ出荷されていないが、同社で最高峰の超高精細高精度EB描画装置「ELS-F150」は、ビーム径をなんと1.5ナノメートル(以下、nm)まで絞ることができ、それで描ける線幅は、驚くなかれ3nm(保証値は4nm)まで可能だ。
1nmは10億分の1メートル。分子のサイズが大きいもので10nm、DNAの幅が2nmと言えば、その極小ぶりがわかるだろう。
現在、主力製品である「ELS-F125」でも4nmの線幅を描画でき、国内外の最先端で研究する大学、研究機関、企業の研究所などに採用されている。ナノテク用EB描画装置の国内シェアは推定80%、海外は正確にはわからないが50%は下らないと思われる。
この描画装置は大量生産用ではなく、研究や試作のために使われており、次世代のLSIや電子デバイス、ナノバイオ製品、MEMS(微小電気機械システム)が、この装置から生まれることになる。
製品名の数値は最大加速電圧を表わし、F150は150kVを示している。加速電圧が高いほどEBの径を細く絞ることができるが、描画に時間がかかるため、生産性を重視する場合は、通常、50kVが使われる。
エリオニクスのEB描画装置は、アメリカのハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)でも使われている。すでに2台を納入しているハーバード大学では研究所内の全装置類の稼働率で、同社の装置が1位(ELS-7000)と3位(ELS-F125)を占めるほどの人気だ。最新のELS-F150も同大への納入がすでに決まっている。