エイミーが店に入ると、店員は彼女の名前を呼んで出迎え、エイミーがオンラインで選んでおいた服の他に、それに合う靴とカクテル・ドレスが用意された試着室に彼女を案内する。彼女はその靴が気に入ったので、スマートフォンを使いバー・コードをスキャンしてみると、同じ靴が他店で30ドル安く売られているのを知る。店員はすぐに他店と同じ価格を提案し、ドレスの試着を促す。斬新なデザインの、高価なドレスである。

 そこでエイミーは、おしゃれな友だち3人に動画を送り、意見を求める。返信はすぐに届く。全員が購入に反対している。エイミーは購入する商品を一まとめにし、クーポンを提供するインターネット・サイトをスキャンし(さらに73ドル節約)、スマートフォンで精算する。

 出口に向かう途中、等身大のスクリーンがエイミーを認識し、とても魅力的な夏向けのブラウスを特価で提示する。エイミーは今月の生活費の残高をオンラインで確認し、にこりと笑い、スクリーンに表示されるエイミー専用のクイック・レスポンス・コードをスマートフォンでスキャンする。この商品は明日には彼女の自宅に届いているだろう──。

 このシナリオはフィクションだが、あなたが思うほど遠い未来の話でもなければ、夢物語でもない。エイミーが利用している技術はいずれもすでに実用化されており、その大半は5年以内に日常的に見かけるようになるだろう。

 しかし、豊富な情報、完璧に近い価格透明性、特典のオンパレードは、買い物客には「夢の実現」に思えるが、多くの小売業者にとってはむしろ悪夢となり始めている。