アナログから抜け出せない小売業界

 デジタル・リテイリングがこれほど急速な成長を続けるのはなぜか。なぜ、すぐに頭打ちになることはないと言えるのか。あるいは、なぜ前回のバブルと同様に内部から崩壊してしまうことはないと断言できるのか。

 オンラインで何度も買い物をしたことがある人ならだれでも、少なくともその答えの一部は知っているはずである。品ぞろえは幅広く、それでいて驚くほど簡単に検索できる。価格は手頃なうえに、比較しやすい。しかも便利だ。ガソリンを消費することも駐車場の空きスペースを奪い合うこともなく、自宅でも職場でも買い物できるのだから──。

 アメリカ国内の消費者について言えば、オンライン購入品の半数は配送料無料で届けられている。この割合は過去2年で10%ポイント増加した。その多くは、無料で返品もできる。製品レビューや「お勧め」などの情報も大量にある。

 オンライン小売業者の全米顧客満足度指数(ACSI)の平均スコア──たとえば、アマゾンは87ポイント──がリアル店舗を構えるディスカウント・ストアおよび百貨店の平均を11ポイント上回っているのは、少しも不思議ではない。

 新しいイノベーションが次々と市場にもたらされるなか、デジタル・リテイリングの優位性はさらに増している。たとえばアマゾンは、クリック1回で支払いの済むシステムや、不要なギフトを消費者が受け取る前でも交換できるオンライン・システムなど、中核となるイノベーションに関する貴重な特許をすでに取得している。

 デジタル小売業者は、人材確保や賃金・ボーナスに大金を投じることで、最高の技術を持った人材を集めて逃がさないようにしている。このようにして、イノベーションを推進している。

 彼らはまた、だれよりも早くクラウド・コンピューティングを活用して参入コストと運営コストを劇的に下げ、だれよりも早くソーシャル・ネットワークとオンライン広告を通じてマーケティングの効率性を高めている。