進化し続けるデジタル・リテイリングは、その過程で急速に別のものに変容しつつあり、「オムニチャネル・リテイリング」という新しい名称が生まれている。これは、小売業者が無数の販売チャネル(ウェブサイト、リアル店舗、キオスク、DMやカタログ、コール・センター、ソーシャル・メディア、携帯端末、ゲーム機、テレビ、ネットワーク家電、在宅サービス、その他もろもろ)を通じて、顧客と相互交流できるようになるという小売戦略を意味している。

独立した各チャネルを、単一のシームレスなオムニチャネル体験に融合させるような、まったく新しい視点を取り入れない限り、昔気質の小売業者はおそらく、時代の波に押し流されるだろう。オムニチャネル戦略に成功することの意味は、単にその企業の生き残りを保証するだけに留まらない。それは、ほぼ半世紀ごとに到来する、顧客期待と顧客経験の革命をもたらすものである。

小売業は今後、デジタルとリアルの両分野が競合するのではなく相互補完の関係となり、それによって売上げは伸び、コストは下がるだろう。

デジタルとリアルの垣根を越える

 土曜日のシカゴ。外は雪だが、28歳のエイミーは、休暇先のカリブ海で着るリゾート・ウエアを探している。

ダレル・リグビー
Darrell Rigby
ベイン・アンド・カンパニーのパートナー。同社のグローバル・リテイリングおよびグローバル・イノベーションのビジネス領域を率いる。

 これが5年前の2011年ならば、彼女はショッピング・モールに直行していただろう。しかし今日の彼女は、自宅のソファーに腰かけてショッピングを始める。先月洋服を2着購入した小売店ダネラ(仮称)のパーソナル・コンシェルジュとテレビ会議を行うのだ。

 コンシェルジュはお勧めの服をいくつか紹介し、それらの画像をエイミーのアバター(ネット上の分身)に重ね合わせてみせる。エイミーは何点かの商品をすぐに断り、別のブラウザー・タブに切り替え、カスタマー・レビューを読み、価格を調べ、いくつかの商品は別の小売店でよりお買い得になっていることを知る。

 それらはその店で注文するが、ダネラでも別の服を一着、オンラインで購入することにし、在庫商品を試着するために近所にあるダネラの店舗に車で向かう。