災害前以上の「復興」は
本当に可能なのか
大災害に襲われた地域では、住民の生命や心身、生活インフラや住環境、地域コミュニティや産業が大きなダメージを受ける。そのときは誰もが、「復旧」あるいは災害前以上の「復興」を望むはずだ。では「復旧」や「復興」は、本当に可能なのだろうか。
始めに、1994年から2014年までの神戸市の人口推移のグラフを見ていただきたい。
神戸市全体では、阪神淡路大震災が起こった1995年と1996年にかけて人口が減少したものの、2002年頃には1994年水準におおむね戻り、その後は2014年まで人口の大きな増減が見られない状態が続いた。
しかし、区ごとに見ると全く様相が異なっており、以下の5パターンに分かれる(神戸市資料より引用、PDF)。このうち1~4は、被災後の経済が辿るパターンとして知られているものと同じだ。
(1)震災後、人口が減少し続けている(例:長田区)
(2)震災後、人口が減少し、そのまま推移(例:兵庫区)
(3)震災後、人口が回復し、そのまま推移(例:神戸市全体)
(4)震災後、人口が回復し、さらに増加(例:中央区、東灘区)
(5)震災後、人口が急増し、そのまま推移(例:西区)
人口は、その地域の状況に関する最も「わかりやすい」指標だ。もちろん、人口だけで何かを判断できるわけではない。年齢構成や人口密度など、重要な指標は他にも数多くある。しかし、人口を5年、10年単位の推移で見ると、成長基調なのか衰退基調なのかが、残酷なまでに明確に示されることが多い。人がいなければ、経済活動は存在できない。人口が減るということは、すなわち経済的衰退だ。
神戸市では2012年頃を境として、さらに状況の変化が見られるのだが、まずは1995年の震災とその後に注目しよう。