小室 働き方を変えたら、仕事に関する視点も変わってきたということなんですか。

川端 自社が働きやすくなってきたことで、これからのオフィスに求められる役割が見えてきたのです。オフィスビルや商業施設などの運営・管理などが我々の本業だと思ってきたのですが、自分たちも働き方を変えてみると、「待機児童問題で保育園に子どもを預けられずに復職できない社員が増えているなか、子連れで仕事ができるスペースがあれば、入居するテナント企業にとって付加価値になるね」というような議論が生まれました。そこから生まれたサービスが、2018年4月にリリースした「コトフィス」という保育所付きワーキングスペースです。

 また、残業が減り、結果として社外の人と関わりを持つ社員が増えてきたことも、よい効果を生んでいます。今までうちの会社はどちらかというと、他社とのコラボレーションの機会が少なかったんです。それが、バスクリンさんと共同で、「大手町の湯」という入浴剤を開発しました。

 というのも、かつては自分たちが管理するビルに入居する企業をいかに増やし、安全・安心・快適な空間を提供するかが仕事だと捉えていましたが、丸の内や大手町、有楽町という街そのものが賑わうことが、結果としてビルの価値を上げることに気づいたからです。そんな盛り上げ策を他社と関わりながら進める中で、大手町で掘削温泉にちなんだ商品の開発ができたわけです。約2年の試行錯誤を経て、2018年10月に販売開始したところです。

重要度が高く緊急度が低い仕事
こそイノベーションの種

小室 なるほど。これはコンサル先でよく実感することです。緊急度と重要度のマトリックスで仕事を整理すると、「緊急度が高い・低い」「重要度が高い・低い」という四象限で分けたとき、どの職場でも「重要度は高いけれど緊急度が高くない仕事」をお蔵入りさせてしまいがちです。「大手町や有楽町といった街自体を盛り上げる」というのは、まさに「重要度は高いけれど緊急度が高くない仕事」ですね。

 こうした「重要度は高いけれど緊急度が高くない仕事」こそ、未来の仕事の種を撒くような仕事ですから、強く意識しておかないと、イノベーションが起きなくなり、企業としての土台が脆弱になってしまいます。

川端 おっしゃる通りです。