「アンチエイジング」は米国で生まれた言葉で、「加齢により発症し悪化する病気を積極的に予防する行為」を意味しています。日本では、美容施術を商業的にプロモートする言葉として主として用いられ、さらに“アンチ”という言い回しが日本人の文化にはあまり好意的に捉えられないことも理由となって、医療機関の広報にアンチエイジングという言葉を使用するのはふさわしくないとされています。
ただ、本来のアンチエイジングの意味は、医学的には「予防医療」とほぼ同義であり、その考え方は医療の上で極めて大切なものです。特に足の血管の病気は加齢の影響を強く受け、かつ主要臓器の疾患に関連することから、健康管理にあたって足の血管のアンチエイジングは極めて重要といえます。
現代の生活様式によって
足の機能低下や臓器のトラブルに
足の血管の病気は、直接命に関わることが少ないとされ、心臓や脳などの病気に比べると本来あまり重要視されていません。ところが、足の動脈や静脈のトラブルは、他の主要臓器の重篤な疾患の前触れとなることがあり、時に命に関わる疾患の原因ともなり得ます。また、健康であるために高いレベルの身体活動が求められる人にとっては、足の病気はしばしば大きな問題になります。
豊富な身体活動を支えるためには、健康な足が必要不可欠です。そして、足のコンディションを整える上で最も大切なのは、組織を養いその代謝物質の処理に関わる血管の健康です。つまり、足の血管の病気は軽視されるべきではなく、足の血管は積極的に健康に保つ必要があるのです。
ヒトは、直立姿勢と大股歩行ができる点で、チンパンジーなどの類人猿と大きく異なっています。そしてこの解剖学的な特性により、二足歩行や二足走行が可能となり、他の動物に比べて高いエネルギー効率で移動ができます。すなわち、ヒトはより少ないカロリーで広範囲を移動できるように進化してきました。
そして、この進化は数百万年かけて得られたもので、ヒトの体はそもそも身体活動しやすいように変化してきたわけです。ところが、文明の発展によって、身体活動の豊富な狩猟採集によって食事を得る必要がなくなり、ヒトは習慣的に怠惰な生活でも生きていけるようになりました。
生物学的に長い時間をかけて形成されてきた解剖学的、生理学的機能は、急激に変化した現代の生活様式によって極めて悪い影響を受けています。特に、二足歩行や走行のために重要な足の機能を維持する上で非常に大切な足の血管にとって、さまざまな弊害が生じるようになりました。
これは、移動するために進化してきたヒトの機能を低下させるだけでなく、生きていくために重要な臓器のトラブルにも密接に関わっています。