足の血管がぼこぼこ浮き上がる
「下肢静脈瘤」が国益を損ねるという見解も

 CVIを来す代表的な病気で、潜在的な罹患人口が極めて多い下肢静脈瘤という病気が最近しばしば取り上げられます。これは足の深部静脈から表面の静脈に血液が逆流して血管がぼこぼこと浮き上がる病気で、見た目の問題だけと考えられることがありますが、CVIとの相関があるので決して軽視できません。身長が高く足の長い欧米人は、静脈にかかる重力の負担がより大きくなるため、CVIそして下肢静脈瘤が発生しやすいようです。

 米国では、この下肢静脈瘤を放置すると国益が損なわれるという研究報告が以前ありました。女性は見た目を気にして下肢静脈瘤の治療に進みやすいのですが、男性はそのまま放置して重症化しやすい特徴があります。重症化すると足の痛みや運動制限を来し、労働生産性が大きく損なわれるので、罹患人口が極めて多い下肢静脈瘤は放置すると国家の生産性を損ねるというのです。

 日本人も高身長化しており、欧米人に変わらず足の静脈への負担は増えています。そのためCVIに関連し得る下肢静脈瘤の罹患率は年々増えている印象を受けます。

足の血管の病気にならないために
「予防医療」という考え方が重要

 PAD、DVT、CVI、そして下肢静脈瘤に限らず、あらゆる疾患は予防することが極めて大切です。その予防医療という概念は、必ずしも「病気の発生を予防する(一次予防)」だけではなく、「病期の早期発見(二次予防)」や「発症した病気の悪化の進行を予防する(三次予防)」まで医療全体を網羅します。

 PADの危険因子である高血圧、脂質異常、高血糖を治療管理することや運動習慣によりCVIの発症を抑えることは一次予防、気になる症状がある際に医療機関でのチェックを怠らないのは二次予防、PADやDVT、CVI、下肢静脈瘤が発症したら早期に治療介入するのは三次予防になります。すなわち、バランスの良い食事と適度な運動を心がける、気になる症状があったら速やかに医療機関に打診する、病気を発症してしまったら積極的に治療に努める、これらは全て予防医療の基本的な考えに基づくものです。

 特に足の血管の病気は、ヒトが進化により築き上げてきた移動する能力を大きく損ねるだけでなく、重篤な疾患に関連することがしばしばあるため、そのマネジメント、すなわち予防医療が極めて肝要だと思われます。

 そして、足の血管の病気は、心臓、脳、肺など重要臓器のコンディションにも大きく関わっていることを念頭に置いて、その発生の予防、進行の予防、重症化の予防を実践することが大切です。

 最後に、今回の記事をもって私が担当する本シリーズは終了となります。正確で公正な新情報と患者さんや現場の生の声を届けることで、皆さんの現代医療への理解と健康管理に役立つことを願って執筆を続けてきましたが、中には、誤解を招く、不十分かつ不適切な表現があったかもしれません。

 それについてはこの場を借りてお詫びするとともに、いつも記事をご覧くださった読者の皆さんに深くお礼を申し上げます。

(北青山Dクリニック院長 阿保義久)