3月は別れの季節。この時期になると、卒業してから会っていない学友のことを思い出す人もいるだろう。誰もが美しい思い出を抱いていればいいのだが、そうではないのが現実。実際には、「もし同窓会が行われても絶対に行きたくない」あるいは「同窓会にはいつもなんだかんだと理由をつけて避けている」人もいるだろう。同窓会に足を運びたくない人たちに、その理由を聞いた。(取材・文/フリーライター 鎌田和歌)
仕事を始めてから
話が合わなくなって…
「仕事を始めてから高校時代の友人たちと話が合わなくなってしまった」と話すのは、Aさん(30代女性)。彼女は、映像の制作会社で働いている。テレビ局からの発注を受けて映像をつくる、いわゆる「下請け」だ。芸能人や著名人に会う機会も少なくなく、現場に居合わせる気安さから、彼らからあだ名で呼ばれることもある。その話を高校時代の友人たちとの飲み会で、請われるままに話したところ、驚かれたのだという。
「驚かれるだけだったらよかったのですが、ちょっとした嫉妬のようなものを感じました。それからは、『忙しくてあまり家に帰れない』と言えば忙しい自慢、『給料が低い』と言えば『きらびやかな世界にいるから交際費がかかるだけでしょ』と言われ。
テレビ局に勤めているならまだしも、下請けの映像会社なんていつもカツカツです。仕事の内容も地味だし裏方。どんなことにも動じず、穏健で礼儀正しくて体力のある人だけが長く働けるような世界。表に映るのはキラキラした部分だけだけど、現場はいたって地味なんですよ。その前提をわかってもらえずに『自慢』って言われるのはつらいなって思います」
Aさんも、同窓会に行きたくないと思っている1人。理由は上記のようなことに加え、「芸能人エピソード」を聞き出されることだという。
「聞かれても、『いい人だよ』ぐらいしか言えないです(笑)。面白いネタがあったとしても、ペラペラしゃべるわけにはいかない。どんな企業にだって守秘義務はありますよね。それと同じだってわかってほしいです」