賃金・報酬は不満足要因になるが
「やる気」の源泉にはなりにくい

 問題は、果たして賃金が上がれば、そうした「よくしよう」とする意欲が湧くのかどうかである。ここで、まず頭に浮かぶのは「賃金」だろう。しかし、心理学者ハーズバーグが提唱して以降よく知られているとおり、賃金・報酬はあくまで「衛生要因」であり、不満足感の要因にはなりやすいが、積極的な「やる気」「意欲」の源泉にはなりにくい。

 今回紹介している調査データを分析しても、報酬上昇は貢献意欲には直結していなかった。むしろ、より強く影響していたのは、現場管理職、つまり「上司との関係性のあり方」の方であった。

 上のグラフは、職場での上司・店長との関係性を表したものだ。意欲の差が大きく見られた項目を抜粋すると、従業員の意欲を醸成しているのは、上司・店長から「必要とされている」と感じられていること、またスキルや責任など「役割」を持たせてもらっている、という実感だ。(性年代・職種を統制した重回帰分析でも統計的に有意)

 逆に言えば、従業員が自分の職務のことを職場にとって「どうでもいい仕事」「誰でもできる仕事」だと感じてしまっていることが、意欲をシュリンクさせてしまっている。同じ職種・同じ仕事内容の職場でもこうした差が起こっているということは、つまりマネジメントによる目標共有や仕事の意味付け、日々のコミュニケーションによって差が出てきていることがうかがえる。

 集団におけるリーダーの役割を「目標達成=Performance」と「集団維持=Maintenance」に分けるPM理論を提唱したのは三隅二不二だったが、アルバイト・パートの領域は正社員領域と比べて、この「Maintenance」機能が軽視されてきた歴史がある。アルバイトは「どうせいつか辞めていくもの」とされ、彼ら・彼女らをマネジメントする管理者・上司層に対しても、売上管理と業績管理の教育、つまり目標達成の教育はされるものの、こと働き手との関係構築、ピープル・マネジメントの領域は相当に手薄になっている。店長・管理者の人手不足・予算不足もあって、こうした「人」へのマネジメントが完全に「現場任せ」になり、属人化している企業も多い。