1.ニッチな市場である
……レーザーの市場はニッチなので、マーケットが世界的でないと成り立ちません。
2.競合が多い
……日本国内では、レーザーは輸入製品が圧倒的に多い市場になっています。したがってレーザー専門の輸入商社は、競合が激しい業界。狭いマーケットの中にライバルが数多く存在します。この激戦区で生き残るのは、容易なことではありません。
3.為替相場の影響をもろに受ける
……日本レーザーは輸入商社なので、為替相場の影響を受けます。たった1円、円安になっただけで、2000万円の利益が吹っ飛んでしまいます。
2012年度と2013年度の比較で、同じ製品を同じメーカーから仕入れているのに、当社全体では「4億円」のコストアップでした。
どんなに自分たちが努力しても、円高・円安という為替変動に日々翻弄されます。
4.ある日突然、契約を一方的に打ち切られる
……輸入先の海外メーカーは、日本での販売が好調になったとたん、輸入代理店との契約を打ち切って、自社で日本法人を立ち上げます。
また、20年以上も取引を続けていた会社から、ある日突然一本のメールが送られてきて、契約終了を突きつけられたこともあります。
私が社長に就任してから、代理店契約を切られた海外メーカーは「28社」にものぼります。つい最近もフランスの上場企業に契約を打ち切られました。
5.ひとりでもビジネスを始めやすい(=腹心に裏切られやすい)
……レーザー業界は、海外メーカーと協力できれば、ひとりでもビジネスができます。
社長に就任してまもない頃、当社の大切な財産である商権(輸入総代理店権)を持ち出し、独立した人がいました。
その人物は、あろうことか、日本電子での先輩海外駐在員であり、私が最も信頼していたナンバー2の常務でした。彼の裏切りによって、日本レーザーは20%の売上を失いました。
6.先払い、あと入金
……日本レーザーの取引の多くは、基本的に支払いが先で、入金があとです。
海外メーカーから装置を輸入して日本で販売する場合、納入先からの入金がなくても、仕入先に支払わなければなりません。
帳簿上の利益は出ていても、販売代金を受け取るよりも前に支払いが発生するため、実際にキャッシュを回すことができなければ、“黒字倒産”の危険性があるのです。
以上がこのビジネスが「修羅場ビジネス」といわれる所以です。
果たして、こんな状況で会社は再建できるのか。
いや、それ以前に本当に黒字になるのか。
一寸先は闇、という状況しかなかったのです。
株式会社日本レーザー代表取締役会長
1944年生まれ。慶應義塾大学工学部卒、日本電子株式会社入社。28歳のとき、異例の若さで労組執行委員長に推され11年務める。取締役アメリカ法人支配人などを経て、赤字会社や事業を次々再建。その手腕が評価され、債務超過に陥った子会社の日本レーザー社長に抜擢。就任1年目から黒字化、以降25年連続黒字、10年以上離職率ほぼゼロに導く。役員、社員含めて総人員は65名、年商40億円で女性管理職が3割。2007年、社員のモチベーションを高める視点から、ファンドを入れずに(社員からの出資と銀行からの長期借入金のみ)、派遣社員・パート社員を除く現在の役員・正社員・嘱託社員が株主となる日本初の「MEBO」(Management and Employee Buyout)で親会社から独立。2017年、新宿税務署管内2万数千社のうち109社(およそ0.4%程度)の「優良申告法人」に認められた。日本商工会議所、経営者協会、日本生産性本部、中小企業家同友会、日本経営合理化協会、関西経営管理協会、松下幸之助経営塾、ダイヤモンド経営塾、慶應義塾大学ビジネス・スクールなどで年60回講演。第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の「中小企業庁長官賞」、第3回「ホワイト企業大賞」、第10回「勇気ある経営大賞」など受賞多数。「人を大切にする経営学会」の副会長も務める。著書に、ロングセラーとなっている『ありえないレベルで人を大切にしたら23年連続黒字になった仕組み』(ダイヤモンド社)などがある。
【日本レーザーHP】http://www.japanlaser.co.jp/ 【夢と志の経営】http://info.japanlaser.co.jp/