相手をリラックスさせるには?
金澤 交渉の場では、自分が「自然体」になることももちろんですが、相手の緊張をほぐし、情報をポロッとこぼしてもらうことも重要だと思います。ライアンさんはその辺、お上手そうですね(笑)。
ライアン そうかもしれない(笑)。交渉は相手をリラックスしてもらったほうがいいですよね。相手が笑って、ほぐれてくれると、警戒しなくなりますし、金澤さんがおっしゃったように、大事な情報をポロッとこぼしてくれやすくなります。
金澤 わざと笑わせたりすることもありますか?
ライアン ありますよ。ただもちろん、相手の雰囲気や、場の空気を読んだうえでですけどね。相手が冗談を嫌うタイプだったら、笑わせようとすればするほどどんどん不機嫌になってしまうでしょう?
でも、たいていは相手をリラックスしてほしいから笑いを取ることが多いかな。金澤さんはどうしていますか?
金澤 私はライアンさんのように、交渉の最中やオフィシャルな場で積極的に笑いを取ったりはしないかもしれません。その分、懇親会などの別の場で思いっ切り「オフな自分」を相手に見せたりしますね。それを機にお客さまから「まったく印象が変わった」と言われることも多いです。
さらにそういった場では、自分が仕事で困っていることや日頃考えていることをわざと相手に明かしたりして、相手が困っていることを聞き出したりもします。
『交渉の武器』には、「交渉担当者の後ろに控える『意思決定者』を意識する」という文言がありますが、これは本当に大事なことです。相手方の交渉担当者が、社内の別の意思決定者を説得できる条件が何かを把握しないまま、こちらの都合だけを一方的に突きつけても、相手は困ってしまいさらに硬直化してしまいますからね。
だから、相手が社内でどんな立場に置かれているのか、交渉において誰の意思決定が最も強いのか、交渉担当者は何をクリアしなければ社内で窮地に立たされるのかを探るのは、私にとって非常に重要な仕事です。ただ、それを探るのは、交渉の場ではないことの方が多いかもしれませんね。