交渉に「男女」による差はあるか?

ビジネス交渉で「武装」するより「自然体」が強い理由

ライアン なるほど、たしかにそうかもしれませんね。

 ところで、これはデリケートな話になってしまうかもしれないんですが……あえて伺いたいことがあります。女性の弁護士から聞いた話なんですが、男性の弁護士と比べると、やはり時折「軽く見られている」と感じるときがあるというんです。これは決して日本に限ったことではなく、アメリカでも同じ。残念なことですが、そのような文化がまだ世界には残っている。だから金澤さんも、無意識のうちに「仕事の場では真面目に」と考えていらっしゃるのかもしれない。

 私は逆。相手からすれば「私は怖く見られる存在」であることを自覚しています。私は体格も大きいですしね(笑)。でも、交渉ではできるだけ相手にリラックスしてほしい。だからあえて「仕事中に」笑わせるんです。金澤さんはそうではなく、仕事をきっちりやったうえで、オフの場では「こんなに親しみやすい人だったんだ」と相手に思わせて、リラックスさせる。この戦略の違いは、性別の影響を受けるのかもしれないと……。あくまでも私見ですが、いかがでしょうか?

金澤 確かに、過去に一回だけ、はっきりと「なめられている」という対応をされたことがあります。それが私が女性だったからなのか、当時若すぎたからなのかはわからないですけど……。その時は結構ショックでした。もしかしたらそれ以外にも、相手が言葉には出さなくても、「女性だから」という目で見られる可能性があるかもしれないということは心得ています。だからこそ、仕事はより一層きちっとやろうと。その意味では、ライアンさんの分析は一理あると思います。

ライアン 本当に不思議なことなんですけどね。仕事をするのに男性も女性もありません。ところが、男性には言わないであろうことを、女性には言ったりする人を見かけることがある。

 そうそう、男女差だけじゃない。国籍や人種にも同じことが言えるかもしれない。私も日本で働いていると、「外国人だから」という目で見られたこともあります。それで小さく傷つくことってあるんですよね。逆に、日本人がアメリカに行ったら「外国人だから」ということで傷つくことがあるはずです。

 そのような偏見をなくしていきたいと思うと同時に、偏見に負けない自分をつくることもまた、「自然体」であるための大切な要素かもしれませんね。

金澤 なるほど。おっしゃること、よくわかります。