オーディオブックは1時間で2万字を聞けます。移動などのスキマ時間に聞ける上に、酷使して疲れている目を休めることもできるなど、オーディオブックならではのメリットがある Photo:PIXTA

動画、ゲーム、SNSと競合コンテンツが多いなかで活字離れが進んでいるといわれる昨今だが、聴く本と呼ばれる「オーディオブック」がじわじわと市場を拡大している。オーディオブックはただ耳で本を聴くというだけではなく、紙の本にはないメリットがいくつもあるという。その活用方法をオトバンク会長の上田渉氏に聞いた。(清談社 村田孔明)

忙しい人でも2日で
1冊の新書が「聴ける」

 オーディオブックとは、書籍をプロのナレーターや声優が朗読した音声コンテンツのことだ。日本最大級のオーディオブック配信サービス「audiobook.jp」は、昨年1年間だけでユーザー数が30万人から倍の60万人になった。サービス開始当初は男性ユーザーが多かったが、現在の男女比は半々に近づいているという。ビジネスパーソン、主婦、学生とオーディオブックの利用者層も広がりをみせている。
 
 この背景を「audiobook.jp」を運営するオトバンク会長の上田渉氏は、次のように説明する。

「オーディオブックなら耳のスキマ時間が活用できます。現代は“目”が忙しい時代です。仕事はパソコン、商談はタブレット、移動中はスマホでメールやSNS。これでは目で読書する時間を確保するのは難しい。しかし忙しいビジネスパーソンでも“耳”のスキマ時間は1日3時間以上あるという方が大半です。新書1冊の文字数は8万~10万字、オーディオブックは1時間で約2万字聴けるので、スキマ時間で2日に1冊は本が読めます」

 読書の重要性を理解しながらも、日々の忙しさから本を読む時間がないという人は多いだろう。仮に一息つける時間があっても、酷使して疲れた目で読書する気にはなりにくい。ところがオーディオブックは移動中やランニング中、1人での食事中といったスキマ時間に、目を休ませながら聴くことができる。

 さらに、耳では誰でも簡単に速読が可能になる。速読といっても、目での読書とは違うため特殊な訓練は必要ない。ただアプリの再生速度を変えるだけでいい。

「誰でも2倍速は聴き取れます。3倍速も数分で耳が慣れてきます。専門分野の最新情報をアップデートする、一度読んだ本の知識・ノウハウを定着されるために繰り返し聴く、という場合におすすめです。もちろん文芸作品など速読に向いていない本もありますが、コンテンツによって、音声スピードを変えられるのもオーディオブックの利点です」

 年々短くなっているといわれている「可処分時間」。時間を有効に活用したいというニーズが高まり、スキマ時間で効率的に情報をインプットできるオーディオブックに注目が集まるのは、ある意味うなずける話である。