3.11以前は国立公園に
地熱発電所新設が困難

 ところが、2011年の東日本大震災による福島第一原発事故後は事情が変わった。事故によって、原子力は安全性に問題があり、かつ発電コストが決して安くないことが明らかになり、世界的に高まるCO2削減対策として、太陽光や風力、地熱発電などの再生可能エネルギーに注目が集まったのだ。

 地熱発電は、太陽光や風力のように発電量が昼夜、年間で変動することもなく、1年365日、朝から晩まで24時間、発電し続けられる。その上、地球内部の莫大な熱を利用するため、エネルギー源が枯渇する心配がないのもメリットだ。

 しかし、東日本大震災以前も、地熱発電の普及には、特有の問題が立ちはだかっていたと江原氏は語る。

「日本の場合、全国で活火山は100個ほど存在し、多くが国立公園内(および国定公園)にあります。ですが、1972年の旧通産省と旧環境庁との覚書により、環境保護が必要な国立公園内特別地域では新たに地熱発電所は建設しないという方針を採りました。地熱資源量2347万kWのうち、81.9%がその国立公園内特別地域内にあるので、そもそも制約が厳しかったのです」

 その “国立公園問題”も、3.11以後は徐々に規制が緩くなり、解決に向かいはじめている。これまで国立公園の約2割の場所でしか調査、建設できなかったのが、環境や生態系に影響を与えないとされる地域にまで対象が広がり、地元の同意を得られれば、国立公園内の約7割にあたる場所で地熱発電所が新設できるようになったのだ。

 とはいえ、地方によってその対応には差があり、一筋縄ではいかないのだという。

「環境省の本省は、全国的に地熱発電所を増やそうとしています。しかし地方の環境省事務所は、本質的に役所は規制をするのが仕事だという考え方がまだ根強く、本省と意識が共有されていないのが実態です。たとえば、地熱発電所を新しくつくろうと申請しても、なかなかスムーズに事が進まないケースもまだあります」